◆「どちらが効率的な戦い方かは明らかだ」
国防族議員として知られる石破茂首相は、多様な無人機が大量投入されているロシアのウクライナ侵攻が起きる前から無人機に注目。2020年7月のBS番組で、将来的に自衛隊が保有すべき装備の例として「無人攻撃機もあり得る」と指摘していた。防衛省幹部は「ウクライナでは1台数万円のドローンが戦車を破壊している。どちらが効率的な戦い方かは明らかだ」と強調する。
これまで自衛隊の無人機の運用は警戒・監視や情報収集が中心だったが、2025年度には攻撃型ドローンを30億円かけて取得する方針。戦闘機の周囲を飛行し攻撃を支える無人機の研究も本格化する見込みで、防衛省によると将来はAI搭載も検討する。
◆「完全自律型の兵器の開発を行う意図はない」
攻撃への心理的なためらいがないAI兵器に殺傷能力を持たせることには、倫理的な問題が指摘される。近年議論となっているのは「自律型致死兵器システム(LAWS)」の存在。起動後に操作を加えなくても自ら標的を選んで襲う「殺人ロボット」と化す恐れがある。衆院選公約では公明党がLAWS規制を訴え、共産党はAIの軍事利用に反対している。
国連総会は2023年12月、LAWSへの「対応が急務」とする決議を日米など152カ国の賛成で採択。国連のグテレス事務総長は、人の操作なしに命を奪う兵器の禁止に向け、2026年までに法的拘束力のある文書の取りまとめを各国に求めた。
それでも技術で優位に立ちたいという各国の思惑が絡み足並みは乱れている。2023年の決議にロシアやインドなど4カ国が反対、中国や北朝鮮、イスラエルなど11カ国は棄権した。日本外務省も「LAWSへの対応は各国の隔たりが大きい」とし、法的拘束力のある文書の締結には消極的だ。
自律型致死兵器システム 人工知能(AI)によって自ら敵を見分け、殺傷する能力を備えた兵器。英語の「Lethal Autonomous Weapons Systems」の頭文字をとって「LAWS(ローズ)」が略称。火薬、核兵器に次ぐ「第3の軍事革命」になるとされる。