第一声で党首たちは何を語った? 「政治とカネ」「物価高」「安全保障」を問う衆院選スタート(2024年10月15日『東京新聞』)

 
 第50回衆院選は15日公示され、27日の投開票に向けて12日間の選挙戦が始まった。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた「政治とカネ」への対応が最大の争点。対応の遅れが指摘された物価高などの経済対策、増税前提の防衛費大幅増などの外交安全保障政策も問われる。有権者が「信頼できる政治」を選ぶことができる政権選択の機会は2021年10月の衆院選以来3年ぶり。(川田篤志
衆院選が公示され、街頭演説に耳を傾ける人ら=都内で

衆院選が公示され、街頭演説に耳を傾ける人ら=都内で

 小選挙区289議席と全国11ブロックの比例代表176議席の計465議席を争う。自公で過半数(233議席)を確保できるかが焦点。立候補者は1344人で内訳は小選挙区1113人、比例単独231人。女性は過去最多だった09年の229人を上回る314人。小選挙区定数「10増10減」などを受けた新区割りで初めて実施される。
 石破茂首相(自民党総裁)は福島県いわき市で行った第一声で「パーティー収入の不記載が二度とないように深い反省のもとに選挙に臨む。日本創生のため、もう一度新しい日本をつくっていく」と語った。
 公明党石井啓一代表は東京都豊島区で「失われた政治への信頼をどの政党が取り戻せるかが問われる選挙」と述べた。
 立憲民主党野田佳彦代表は八王子市で「企業・団体献金は廃止し、一人一人と向き合う政治を実現しなければならない。裏金を許さず自民政治に決別しよう」と訴えた。
 日本維新の会馬場伸幸代表は新宿区で「消費税2%の減税などで可処分所得を増やして、経済を成長させる」と主張した。
 共産党の田村智子委員長は豊島区で「カネまみれの政治を生んでいる政党助成金を廃止する」と強調。

◆国民民主党

 国民民主党玉木雄一郎代表は神戸市で「減税、社会保険料の軽減などで国民の手取りを増やす」と述べた。

◆れいわ新選組

 れいわ新選組櫛渕万里共同代表が東京都墨田区で「経済音痴から日本を取り戻す」と第一声。
 社民党福島瑞穂党首は沖縄県浦添市で「軍事予算がうなぎ上りで生活を圧迫する政治を変えよう」と呼びかけた。

◆参政党

 参政党の神谷宗幣代表は大阪市で「争点は日本がどう生き残るかだ」と語った。

 派閥裏金事件 自民党の派閥で議員側がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を政治資金収支報告書に記載していなかったとされる政治資金規正法違反事件。東京地検特捜部は1月、安倍派の会計責任者や受領額の多い議員ら計10人を立件した。麻生派以外は解散方針を決め、一部は既に解散した。自民党は4月、関係した議員ら39人を処分。不記載額が500万円未満の議員ら45人は幹事長注意となった。

◆「包容力」取り戻す選挙に【政治部長・関口克己】

 政治報道に関わってきた20年弱の間、部員や家族との会話でも、国会議員を呼び捨てにしないよう努めてきた。どんなに批判をされているような議員でも、国民の負託を受けた「国民の代表者」(憲法前文)であることへの自分なりのリスペクト(尊敬)があった。
 最近、その信条にモヤモヤを感じてしまう。自民党派閥の裏金事件や相次ぐ不祥事で、国民の負託を裏切る議員があまりにも多いからだ。
 安倍政権以降の「自民1強」政治はどうだったか。物価高に少子化、揺らぐ専守防衛—。重苦しい話題は数多いが、私は国民を守る包容力を失ったと思う。
 「こんな人たちに負けるわけにはいかない」
 2017年、東京都議選の街頭演説で、当時の安倍晋三首相が聴衆らに向けた言葉だ。政権批判をしていた人たちとはいえ、首相が国民を「こんな人たち」呼ばわりした時、政治から優しさが失われた気がして、がくぜんとしたことは今でも忘れない。
 「聞く力」のメッキがはげた首相もいた。裏金をつくる議員が日々の生活に苦しむ国民を向いているとは思えない。裏金議員の多くを公認した石破茂首相は自民党の内輪の論理を守ろうとしているのではないか。こんな政治の劣化を招いた責任は「自民1強」を前に、互いの足を引っ張り合ってきた立憲民主党をはじめとする野党側にもある。
 政治に包容力を取り戻すのは誰か。それは選挙の時だけ、国民にすり寄る政治家ではなく、政治に負託する有権者。政権選択の機会となる衆院選で、自分の思いを一票に託したい。