ソフトバンク・山川穂高「来てよかった」 移籍1年目でキング独走 MVP有力候補(2024年9月24日『サンケイスポーツ』)

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ソフトバンク小久保裕紀監督(手前)と抱き合う山川穂高=京セラドーム(撮影・渋井君夫)
パ・リーグオリックス4-9ソフトバンク、23回戦、ソフトバンク16勝6敗1分、23日、京セラ)ソフトバンクが4年ぶり20度目のパ・リーグ制覇を果たした。西武から国内フリーエージェント(FA)権を行使し移籍1年目の山川穂高内野手(32)は、引退も考えたほどの2年間を越え、32本塁打を放つなどMVP級の働きを見せた。人生初の日本一を目指し、ファンとともにさらなる「どすこ~い」を決める。
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上戸彩ソフトバンク優勝を祝福「この先も全力で応援しています!!」
この感動は、苦難を乗り越えた「山川穂高」にしか分からない。野球ができない地獄から、新天地で夢にまで見た優勝-。
「普通にうれしいです。でも、調子が悪い月のほうが多かったので、みんなにカバーしてもらった優勝です」
優勝決定の一戦は、一発こそなかったが、しっかり2安打。不動の4番として役割を果たした。
波瀾(はらん)万丈の2年間だった。女性問題により、西武球団から公式戦出場停止処分を受けた。昨シーズンは17試合でノーアーチ。引退も考えたが、FA権を行使しソフトバンクを復活の地に選んだ。
新天地はチームメートもファンも温かかった。キャンプの練習試合で〝移籍1号〟を放ったとき。「〝どすこい〟は当分、封印しようと思ってたんです」。ところが柳田におねだりされ、両手を突き上げたら、まさかのスタンドが〝みんな一緒にどすこ~い〟。
「生まれた沖縄に近い九州のチームに来てよかった」
心から感謝した瞬間だった。
バットでしか恩返しはできない。4月13日の西武戦では史上3人目の2打席連続満塁打で度肝を抜いた。舞台は昨年までの本拠地。大ブーイングの中だった。西武ファンの気持ちを察して、ヒーローインタビューは辞退した。心優しき、気配りの男は、いつも控えめ、正直に答えてきた。
「よく食べて、よく寝るしかないんです」
8月に入って、小久保監督と村上打撃コーチが「(状態が)いいなあ」と声を掛けたら…。
「こんなもんじゃないですよ」
実は首脳陣にだけは、控えめではなかった。そこから4戦連発したが、口癖はそのまま「こんなもんじゃ…」。そして15日には1試合3発。指揮官と打撃コーチは顔を見合わせて、あきれ果てるしかなかった。柳田を、近藤を、超一流を間近で見てきた首脳陣をあんぐりさせた。それでも、山川の感想は「こんなもんじゃないです」-。本塁打を量産し、打点を稼ぎ、誰もが認めるMVPの有力候補だ。
そんな山川だが、目標は〝ここ〟ではない。西武時代に2度の優勝を経験したが、クライマックスシリーズ(CS)では下克上を食らっている。CS通算1勝8敗。何よりも、日本シリーズの舞台に立てていないのだ。
「まだまだ、こんなもんじゃない」という山川が、人生初の日本一にロックオン。「シリーズどすこ~い」こそが夢。復活ドラマは、まだまだ続く。(上田雅昭)