立憲民主党の野田佳彦新代表は、早期の衆院解散・総選挙が見込まれる中、総裁選で刷新感を競い合う自民党に対抗し、かつて政権を担った経験で安定感を打ち出す。外交・安全保障やエネルギー政策などで現実路線を掲げ、旧民主党政権で失った信頼の回復を訴えるが、自民党との違いは見えづらくなる側面もある。政権交代に向け、従来の野党連携にとどまらず、穏健な保守層を含めた幅広い反自民勢力を取り込むことができるか。(我那覇圭)
野田氏は23日、東京都内で開かれた臨時党大会で「何よりも大事なのは、国民の政治に対する信頼だ。金権政治を終わらせ、世襲政治を制限する」と強調。世襲が多く、派閥の政治資金パーティー裏金事件で政治不信を招いている自民との違いをアピールした。
経済政策では第2次安倍政権以降、大企業や富裕層が潤っても、物価上昇に苦しむ多くの家計には恩恵が届いていないことから「格差を是正し、分厚い中間層を復活させる」と主張。低所得者への恩恵が大きい給付付き税額控除や、代表選で吉田晴美衆院議員も訴えた教育無償化を実現する考えを示した。
◆「安保法制の違憲部分の廃止」トーンダウン
政治とカネの問題や経済政策では独自色を発揮する一方、旧民主党政権で大幅な政策転換を模索して頓挫した反省から、日米同盟など外交・安全保障などには自民政権からの継続性を重視する。安全保障では党が基本政策に掲げる「安保法制の違憲部分の廃止」をトーンダウン。党綱領に明記されている「原発ゼロ」は「封印」し、原発に依存しない社会を目指すという現実的な表現に切り替えた。
立民を特徴付けてきたリベラル色を薄め、穏健な保守層へ支持を広げる構えだが、これまでの候補者擁立は順調とは言い難い。289の小選挙区のうち、候補を擁立できたのは約190にとどまる。自公を過半数割れに追い込むために、他党との候補のすみ分けや連携の調整が急務となる。
立民は前回の2021年衆院選で、共産党と候補者調整や「限定的な閣外協力」の合意を交わし、自民から「立憲共産党」と批判され、思うように票を伸ばせなかった。今回は安保政策を現実路線に転換し、野田氏は「共産党と同じ政権を担えない」として選挙協力を見直す考えだ。
◆協力見直し方針に共産は警戒
共産の小池晃書記局長は23日、記者団に「安保法制の廃止は野党共闘の『一丁目一番地』だ。すぐに廃止できないということは重大だ」と対応を問題視。代表選の期間中に愛知や千葉などで立て続けに候補を擁立し、前回は立民を支援した選挙区にも候補をぶつけ、早くも反自民票の分散が懸念される状況となった。
反自民勢力の結集には、野田氏が連携に意欲を示す国民民主党に加え、日本維新の会など他の野党との協調も検討課題となる。立民の中堅議員は「まずは党役員人事で挙党態勢を築いた上で、野党連携の道を探ってほしい。次期衆院選で共産に対抗馬を立てられ、維新とも協力できないようなことになれば、悲惨な結果につながる」と指摘した。
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◆10月臨時国会の論戦へ…まずは裏金事件の徹底追及が課題に
立憲民主党の野田佳彦新代表が10月の臨時国会で、重要課題として位置付けるのは自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の徹底追及だ。自民党総裁選の9候補はいずれも政治改革を唱えるものの、実態解明には後ろ向き。野田氏は「政治に信頼がない限り、政策は推進できない」として、政治資金規正法の再改正や裏金議員の政治倫理審査会への出席を岸田文雄首相の後任となる新首相に迫る構えだ。(近藤統義)
野田氏は臨時党大会の決意表明で「政権交代こそが最大の政治改革だ」と主張。代表選を通じて、自民に裏金事件の再調査を求めたほか、企業・団体献金の禁止や政策活動費の廃止、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開といった抜本改革を訴えてきた。臨時国会では、本会議での各党代表質問だけでなく、一問一答形式で論戦する衆参予算委員会の開催を与党に要求する。
◆維新「野田氏なら一緒に改革進められる」
政治改革は野党が一致できるテーマで、野田氏は8月、日本維新の会の勉強会に講師として出席した。党内には野田新体制での維新との接近に警戒感があるものの、維新幹部は「野田氏なら一緒に改革を進められる」と連携を期待する。