政権を失い12年…野田佳彦元首相は「成長」見せられるか 「現実路線」有権者の評価は 立憲民主新代表に選出(2024年9月23日『東京新聞』)

 
 立憲民主党の代表選は23日、投開票され、野田佳彦元首相(67)が新代表に選ばれた。1回目の投票では過半数を得る候補がいなかったため、上位2人による決選投票を実施した結果、野田氏が枝野幸男前代表(60)を破った。野田氏は当選後のあいさつや記者会見で「本気で政権を取りに行く覚悟だ。皆の力を合わせ、打倒自民に向かいたい」と表明。24日中に党役員人事の骨格を固め、衆院解散と総選挙に向け準備を急ぐ方針を示した。(中沢穣)

◆政権奪還に意欲「自公を過半数割れに追い込む」

立憲民主党の臨時党大会を終え、記者会見する野田佳彦新代表=23日、東京都内のホテルで(須藤英治撮影)

立憲民主党の臨時党大会を終え、記者会見する野田佳彦新代表=23日、東京都内のホテルで(須藤英治撮影)

 野田氏は次期衆院選について「自公を過半数割れに追い込む。そのために野党の議席を最大化する」と強調。自民党の派閥裏金事件に関係する議員の対抗馬の擁立を急ぐ方針も示した。国民民主党など他の野党との連携については「誠意ある対話をしていきたい」と述べた。
 党役員人事については、「私にない刷新感をどうつくるかは重要な観点だ」と中堅や若手を登用する可能性に言及した。週内に「次の内閣」と総合選挙対策本部を立ち上げる考えも示した。

枝野幸男前代表との決選投票を制す

 代表選には野田、枝野両氏のほか泉健太代表(50)、吉田晴美衆院議員(52)の計4人が立候補した。国会議員と公認候補予定者、地方議員や党員・協力党員が参加した1回目の投票では、野田氏267ポイント、枝野氏206ポイント、泉氏143ポイント、吉田氏122ポイントで、いずれも過半数に達しなかった。
 国会議員と公認候補予定者、47都道府県の代議員で実施した決選投票では野田氏が232ポイントを獲得、180ポイントの枝野氏を上回った。
 今回の代表選は泉氏の任期満了に伴い実施された。野田氏の任期は2027年9月まで。
 野田氏は衆院千葉4区選出で当選9回。2009〜12年の民主党政権財務相や首相を務めた。1年3カ月余りの首相在任中に、政権公約になかった消費税率引き上げを打ち出して党分裂を招き、2012年衆院選で大敗して下野した。

◆記者解説 十数年ぶりに巡ってきた失地挽回のチャンス

 立憲民主党の新代表に野田佳彦氏が就いた。12年前に旧民主党が政権を失った際に同党代表で首相だった野田氏は、国民が再び政権を託せる責任政党の姿を示せるかが問われる。
 旧民主の下野後、野党は弱体化し、自民党一強の時期が続いた。公文書の改ざんや法律の恣意(しい)的な解釈変更などが横行し、国民の政治への信頼は低下した。
 責任の一端は非自民勢力をまとめて政権の選択肢を示せなかった野党第1党にもある。自民に強い逆風が吹いても立民の支持率は低迷してきた。そんな中、自民の派閥裏金事件などによる岸田政権の退陣を政権奪還の好機と見た野田氏は、代表選で「政権交代前夜」とのスローガンを掲げた。敵失ながら、十数年ぶりに巡ってきた失地挽回のチャンスをどう生かすのか。
 野田氏が示した処方箋は「総理経験者としての安定感」を強調する現実路線。旧民主党政権は意欲的な公約を掲げながら実現できず後に重荷となった。その反動からか、野田氏を含む代表選の4候補は理想や夢をあまり語らなかった。
 有権者衆院選で野田新代表の現実路線をどう判断するのか。十数年の反省を生かして、成長した姿を見せられるかどうかの正念場となる。(中沢穣)
立憲民主党の代表選を終え、気勢を上げる野田佳彦新代表(中央)ら=23日、東京都内のホテルで(須藤英治撮影)

立憲民主党の代表選を終え、気勢を上げる野田佳彦新代表(中央)ら=23日、東京都内のホテルで(須藤英治撮影)