「きょうもパラアスリートが何を達成できるか示せた。今苦しんでいる人にメッセージを送りたい。『あなたを小さく見ようとする人を信じるな』『あなたは小さくない』」
パリパラリンピック、陸上の男子走り幅跳びで4連覇を果たしたドイツのマルクス・レーム選手は、圧倒的なジャンプでパラアスリートの可能性を改めて世界に示しました。
限界に挑戦するパラアスリートたち。その姿とことばが、少しずつ世界を変えようとしています。
(パリパラリンピック取材班)
2大会ぶりの有観客 熱気に包まれたパリ
フランス、パリで開かれた初めてのパラリンピック。
そのチケット販売数は250万枚以上に上り、最も成功したとも言われるロンドンパラリンピックに次いで過去2番目に多くなりました。
原則、無観客だった3年前の東京パラリンピックから一転、競技場は観客で埋まり、若い世代が多く足を運びました。
原則、無観客だった3年前の東京パラリンピックから一転、競技場は観客で埋まり、若い世代が多く足を運びました。
陸上・石山大輝 選手
「本当にお客さんが多く、こんなのは初めて。またすぐに4年後が来ないかなと思うくらい楽しかった」
「本当にお客さんが多く、こんなのは初めて。またすぐに4年後が来ないかなと思うくらい楽しかった」
柔道・半谷静香 選手
「声が私の背中を押してくれた」
「声が私の背中を押してくれた」
語ることばの強さ 特別な思いを胸に
特別な思いを胸に臨んだ選手の姿もありました。
勝敗を競うだけではなく、出場する意味を語ることばに強さがありました。
勝敗を競うだけではなく、出場する意味を語ることばに強さがありました。
アフガニスタン出身のテコンドーの女子47キロ級、ザキア・フダダディ選手も祖国の女性たちを勇気づけたいと臨んだ1人です。
ザキア・フダダディ 選手
「すべての女性のためにベストを尽くしました。世界の皆さん、どうかお願いです、アフガニスタンの女性を忘れないでください。私は祖国の女性やパリにいるすべての難民の味方です」
「すべての女性のためにベストを尽くしました。世界の皆さん、どうかお願いです、アフガニスタンの女性を忘れないでください。私は祖国の女性やパリにいるすべての難民の味方です」
バレンティナ・ペトリッロ 選手
「トランスジェンダーに対する偏見や否定的な考えがつきまとっているのは間違ったことです。男性として生まれたことが差別の理由となるべきではありません。私たちはみんなと同じ権利を持つべきです」
「トランスジェンダーに対する偏見や否定的な考えがつきまとっているのは間違ったことです。男性として生まれたことが差別の理由となるべきではありません。私たちはみんなと同じ権利を持つべきです」
パラリンピックで広がる 障害ある人にスポーツを
パラリンピックをきっかけに、障害のある人がスポーツに取り組みやすい環境を整えようという動きもパリで広がり始めています。
パリ市内にあるボクシング専門のスポーツ施設では、一般の利用者と一緒に障害のある人も利用しています。もとは一般の利用者向けのスポーツ施設でしたが、今では障害のあるなしに関係なく、一緒に汗を流しています。
障害のある利用者の数は、およそ1000人を超えました。
障害のある利用者の数は、およそ1000人を超えました。
このスポーツ施設が参加したのは、パリ市が中心となって運営する、障害のある人たちのスポーツを振興するネットワークです。参加すると、専門的な知識を持つ講師から障害のある人の指導に必要な知識を学べる研修を受けることができます。
さらに、施設で培われたノウハウが共有され、どの施設でも質の高い指導を提供できるといいます。今ではパリ市内の200以上の施設がこのネットワークに参加し、広がりを見せています。
さらに、施設で培われたノウハウが共有され、どの施設でも質の高い指導を提供できるといいます。今ではパリ市内の200以上の施設がこのネットワークに参加し、広がりを見せています。
相次いだ日本勢初の金メダル 選手発掘の課題も
日本からは海外で開催されたパラリンピックでは史上最多となる175人の選手が出場しました。
▽金メダル 14個
▽銀メダル 10個
▽銅メダル 17個 計:41個
▽銀メダル 10個
▽銅メダル 17個 計:41個
パリ大会は日本勢初となるメダルが相次ぎました。
上地結衣選手は女子シングルスで初の金メダル、そしてダブルスとの2冠を達成。
男子シングルスでは18歳の小田凱人選手が金メダルに輝き、車いすテニスでは金メダル3個を含む、4個のメダルを獲得。日本の強さを示しました。
日本選手団の田口亜希団長は記者会見で、選手強化の成果を強調した一方で、新たな選手の発掘には課題があるという認識を示しています。
車いすラグビー 岸光太郎ヘッドコーチ
「4年後のロサンゼルス大会に向けてライバルも強くなるし、われわれも育成という部分で課題を抱えている。金メダルを取った姿を見て興味を持った人がプレーしてくれれば」
「4年後のロサンゼルス大会に向けてライバルも強くなるし、われわれも育成という部分で課題を抱えている。金メダルを取った姿を見て興味を持った人がプレーしてくれれば」
パリパラリンピックがもたらしたものは
「障害のある人への見方が変わった。ハンディキャップがあっても自分の能力を超えることができるとわかった」
「たとえ人と違っても、たとえ悲劇的な事故にあったとしても、人生最後まで再び立ち上がることができるというモチベーションを与えてくれた」
障害と向き合い、工夫と努力を重ねて挑戦する選手たちの姿から共感や感動だけでなく、新たな気付きを得たという声を多く聞くことができました。
こうした声を開催地で聞くことができたのは、これまで3年間、選手たちの取材を続けてきた私たちにとってもうれしいものでした。
こうした声を開催地で聞くことができたのは、これまで3年間、選手たちの取材を続けてきた私たちにとってもうれしいものでした。
限界に挑む選手たちの姿を通して1人でも多くの人が何かを感じ、何かを変えて、障害のあるなしに関わらず、みんなが暮らしやすい世の中になるように。
東京のレガシーがパリに引き継がれ、4年後のロサンゼルス大会でさらに広がるよう、私たちも取材を続けていきたいと思います。
東京のレガシーがパリに引き継がれ、4年後のロサンゼルス大会でさらに広がるよう、私たちも取材を続けていきたいと思います。