亡くなった「元県民局長」の文書は“誹謗中傷”と未だ言い張る「斎藤知事」 それでも「維新」は知事擁護(2024年9月7日『デイリー新潮』)

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斎藤元彦知事
 パワハラやおねだり等の疑惑を告発された兵庫県の斎藤元彦知事(46)が、9月6日の午後、再度、百条委員会(県議会の調査特別委員会)に出席した。今回の審議内容は、公益通報者の保護と贈答品の授受についてだった。
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 前日の5日に行われた百条委員会では、まず斎藤知事の最側近と言われる井ノ本知明・前総務部長が心身の不調で欠席と伝えられた。続いて尋問されたのは、同じく斎藤知事の側近のひとりとされる田剛治・産業労働部長だった。
 原田部長は、斎藤知事が3月21日に側近の“4人組”を集め、元県民局長(7月に死亡)が配布した告発文書について「事実関係を調べよう」と指示があったと証言した。
 6日午前の百条委員会では、もうひとりの側近と言われる片山安孝・前副知事を尋問。原田部長と同じく、斎藤知事から3月21日の協議で「(告発文書について)徹底的に調べてくれ」と指示を受けたことを証言した。
 そして6日午後には、告発者の元県民局長が懲戒処分を受けたことについて、参考人として呼ばれた消費者庁公益通報者保護制度検討会委員の山口利昭弁護士から見解を聞いた。山口弁護士は「元局長の文書配布は外部公益通報に当たる」「事業者(県)は通報者への不利益な取り扱いを防ぐための措置が義務付けられている」とした上で、こう力強く訴えた。
山口弁護士:文書の存在を知った直後に誰がどの目的で書いたのかを捜すのはあり得ない。明らかな法令違反だ。兵庫県は今も違法状態にある。
 2人の側近から告発文の調査を命じたのは斎藤知事だと証言され、公益通報の専門家はそれが違法であることを指摘、完全に外堀が埋められた状態で、斎藤知事の2回目の尋問が始まった。まず尋ねられたのは、3月21日の協議についてである。
いつもの論調
斎藤知事:当該文書の内容を見て、私自身について事実でないことが含まれていると感じましたし、その場でいくつかの項目について片山副知事に聞いても、「違います」ということでしたので、誰がこの文書を作成したのか、なぜ作成したのかということなど、しっかり事案として把握することが大事だということで、「しっかり調査するように」という指示を出しました。
 公益通報者保護法違反に該当する調査を、斎藤知事が指示したことを認めたことで、審議は“詰んだ”と思われた。ところが、ここから彼は独自の持論を展開したのだ。
斎藤知事:私自身が文書を読んだときに、具体的な供述や信用性の高い証拠とか、そういったことが文章自体に書かれてないということが一点。それからもう一点、「噂話を集めて作成した」と元県民局長が供述していたと報告を受けましたので、外部通報で保護される要件に当たらないと判断した。(中略)私の認識としては、告発というよりも誹謗中傷性の高い文書だと思ってましたんで、それを作成した人を、その内容の意図などを含めて聴取することは問題ないと思っています。
 百条委員会の委員長・奥谷謙一県議(自民党)が呆れて尋ねる。
おねだりのオンパレード
奥谷委員長:問題ない? 告発文に書いてある当事者が文書の作成者を探すというのは、告発を握りつぶそうとしていると感じられると思いますが、そういう認識はないのですか。
斎藤知事:そういう認識はないです。告発というよりは誹謗中傷性の高い文書を作成したということですから、その作成者はどなたか探すということは必要なことだと思っています。(中略)公益通報に該当するとは今も思ってない。
 相変わらず堂々としたものである。もっとも、公益通報に該当するかどうかは、告発された当人である斎藤知事が判断することではない。別の委員(県議)から「真実かどうかは関係なく、公益通報者を調査することが違法」であることを指摘されても、のれんに腕押し……。
斎藤知事:我々はあくまで真実相当性で調査を進めてきた! 私は公益通報者保護には該当しないと考えている。
 頑として聞かない、というよりも、話が通じず、堂々巡りである。この日、一問一答の形が成立したのは贈答品、いわゆる“おねだり”についてだった。百条委員の松本裕一県議(自民党)がこれまで知事がもらった品物を並べ立てた。
松本委員:姫路城のレゴブロック、スポーツシューズ複数、兵庫海苔・明石海苔、播州織りの浴衣、ジャケット、ネクタイ等、バスケット、サッカー、ラグビー、バレーボール、野球等の様々なユニホーム。ロードバイクは返却済みですが、アンケートにはヘルメット、サングラス、ウエアも一緒にもらったとの声もある。牡蠣、ワイン、枝豆、職員の分まで持ち帰られた蟹、日本酒、岩津ネギ、淡路タマネギ、バースデーケーキ、湯飲みセット、高級革ジャンパー……。
 驚くべきことに、斎藤知事はこれらの贈答品について、どこから何のためにもらったのかをひとつひとつ明確に答えていった。恐るべき記憶力である。職員の進言についての質問には「記憶にない」と答えることもあったのに。
 そして贈答品について、知事擁護に回ったのが例によって維新の会所属の百条委員・増山誠県議だった。
おねだりを擁護
増山委員:(告発)文書の中には、《知事の自宅には贈答品が山のように詰まれている》とありますが、これは事実でしょうか? 
斎藤知事:そういったことはないです。
増山委員:聞いたところによると、(前職の)井戸(敏三)知事は自宅(の住所)を公開されていたので、贈答品については自宅に届けられることが多かったとの職員の声を聞いております。斎藤知事は自宅(の住所)を公開されておりませんので、基本的には現場でもらうか、知事室に届く。この違いですね、かなりイメージが違ったのではないかという話を聞いております。20年務められた井戸知事の時に贈答品がなくて、急に斎藤知事になってから山のように贈答品が来ているというのは考えにくい。この中で元県民局長は、斎藤知事にのみ、おねだり体質を指摘されているということだけ指摘させていただきたいと思います。
 とある県職員はいう。
「そもそも斎藤知事の“おねだり体質”など些末なことです。問題はパワハラなどで県職員を困らせ、公益通報者保護を怠ったために元県民局長を死に追いやったことですから。しかも、元県民局長が亡くなった原因のひとつは、維新会派が元県民局長のプライバシーを暴こうと、メールなどの資料開示を執拗に迫ったためと言われています。実はこの日、斎藤知事が退席した後、今後の資料要求について話し合いがもたれた際に、あろうことか維新は再び、元県民局長の資料開示を迫ったのです」
維新の秘策
増山委員:片山元副知事がですね、「《クーデター》ですとか《斎藤県政転覆》(という言葉が使用されていたこと)が不正な目的に当たるので、公益通報に当たらない」というような主張をされていたので、その辺がわかる元県民局長のメールデータを請求したいと思いますが、いかがでしょうか。
奥谷委員長:元県民局長の資料については、プライベート情報は除外しているので、メールについてはそれが含まれることがあり得ますので、今は判断できません。
増山委員:プライベート情報と書いてある部分については除外してもいいんですが、他のところはマスキングが入ってもいいので、内容がわかるぐらいは開示いただかないと解明が進まないんじゃないかと、斎藤知事もおっしゃっていましたけど。
 そもそも告発文書に《クーデター》や《斎藤県政転覆》などといった言葉はない。この百条委員会は「文書問題調査特別委員会」であるから、メールの内容などどうでもいい話である。当然、他の会派からは「請求の必要はない」「それこそが違法だ」といった反論が相次いだ。前出の県職員は言う。
「聞くところによると、増山県議は元県民局長から告発文書を受け取った新聞記者の証人尋問を検討しているんだそうです」
 報道関係者を百条委員会に呼んで、何をしようというのだろう。
「告発文書を受け取って公益通報だと思ったかを質問して、『公益通報とは思わなかった』と答えれば、斎藤知事に有利になると思っているらしいですよ。情報源を守る報道関係者がそんなことに答えるはずないと思いますけど、そこまでして斎藤知事を守ろうとする彼らの発想がわかりません」
デイリー新潮編集部

泉房穂氏 明石市長時代の斎藤兵庫県知事と「連携に困りました」あ然の理由「知事になりたい方、という印象」(2024年9月7日『デイリースポーツ』)
 
 兵庫県明石市長だった泉房穂氏が7日、ABC「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」に出演。パワハラ疑惑が問われている斎藤元彦兵庫県知事の資質について言及した。
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 「お前が言うなと言われるかもしれませんが」と前置き。「知事選の前にも会って話をした。『どうして知事選に出るんですか?』と聞いた」と対面したときの質問を明かした。
 「『私の名前が元彦だから』と言われて。生まれたときの兵庫県知事の名前が、金井元彦という知事で、知事の近くにおられたのがおじいちゃんで、知事から名前をもらって、つけられた」と自身の名前が知事を目指す動機だったことを打ち明けられ、「私は、それは人にあまり言わん方がええよと言った」と話した。
 泉氏は「兵庫県をどうしたいん?」と聞いたが、斎藤氏は「あまり答えがなかった」という。「そういう意味では“知事になりたい方”なんだなという印象でしたね」と続けた。
 明石市長と県知事という関係だった時期を振り返り「前の知事のときは1カ月に1回くらい顔を合わせる機会はあったり、携帯電話で連絡を取り合ったが、この知事さんに関しては、私が初めて会えたのは8カ月もたってから。基本的に兵庫県内の市長や町長とは会わない方だったので、連携には困りました」とコメントした。