兵庫県の斎藤知事のパワハラの疑いなどを告発する文書をめぐって、県議会の百条委員会で知事本人への2回目の証人尋問が行われました。
斎藤知事は、文書の作成者や意図などを徹底的に調べるよう指示したことを明らかにした上で、県の対応に問題はないという考えを改めて示しました。

この問題をめぐって県議会の百条委員会は6日、斎藤知事に対する2回目の証人尋問を行いました。
この中で斎藤知事はことし3月に告発文書を把握した当時の状況について「事実でないことが含まれていると感じたので、誰が作成したのかや作成した意図などをしっかり把握することが大事だと指示した」と述べ、徹底的に調べるよう指示したことを明らかにしました。
そして「私としては、文書は誹謗中傷性が高く、うわさ話であり、公益通報にあたるとは思っていなかった」と述べました。
また県の幹部から第三者機関での調査を進言されたかと問われたのに対し「少なくとも進言を受けたという記憶はない。話には出たかもしれないが協議をした記憶はない。積極的にやりたいという話でもなく、人事課の調査で十分だという話になったと思う」と述べました。
告発文書を作成した元局長を公益通報の保護対象とせず懲戒処分にした対応については「県としてこれまで懲戒処分に関することは法的にも問題ないところでやってきているので、手続きなどに瑕疵はないと考える。県や知事としての対応に問題はなかった」と述べました。
そして、ことし7月に元局長が死亡し、自殺とみられていることについて「亡くなったことは大変残念でつらいし、お悔やみを申し上げたい。ただ、亡くなったことは本人にしか理由が分からないところがある。私としてはこれまでの対応はしっかりやってきたと思う」と述べました。

一方、出張先などで贈答品を受け取った疑いについては、サイドテーブルや播州織の浴衣、スポーツウエアなどを受け取ったことを認めた上で、「多くは知事の応接室にあるか、倉庫に保管している」と述べました。ただスポーツウエア会社との癒着はないと説明しました。
このほか、地元産のかきや、かに、ワイン、日本酒、タマネギなどを受け取ったことがあると認めた上で、「食べものなど消費するもの、生ものなどは出先でもらって、直接家に持って帰ったことはある」と述べました。
その上で県行政のトップとして一連の問題について道義的責任を感じているかと問われたのに対し、「道義的責任というものが何か分からないので明確にコメントできないが、いまの県政の状況を招いているということについては、県民の皆さんに本当に深くおわびを申し上げたい」と述べまし

【斎藤知事の発言】

元局長の死亡「大変残念でつらい 対応はしっかりやってきた」

元局長が死亡したことの責任を問われた斎藤知事は、「亡くなられたことは大変残念でつらいですし、お悔やみを申し上げたいと思います。ただ、亡くなられたことはご本人にしかその理由が分からないところがある。私としてはこれまでの対応はしっかりやってきたと思う」と述べました。

「真実相当性がない理由は2つ」

斎藤知事は告発文書の内容に「真実相当性がない」と主張していることについて委員から根拠を問われたのに対し「真実相当性がない理由は2つあり、1つが客観的な証拠や信用性の高い供述があるかどうかで、これについては文書そのものにも例えばいつ誰がどういった証言をしたとか写真とかそういったものが付いていなかった」と述べました。
そして、「もう1点が3月25日の元局長と職員局長との電話で、元局長が『うわさ話はあちこちにあるやん。それを集めたんやけど』というやり取りがあった。うわさ話を集めたものではないという事が要件となっているのでやはり真実相当性はないと私は考えている」と述べました。

会社との癒着「ない」

贈答品をもらったスポーツウェア会社との癒着があるか問われたのに対し、斎藤知事は「ないです。スポーツ振興のために、双方でやっていこうということだ」と述べました。

贈答品「応接室か倉庫」 食べものなど「持って帰ったことも」

 

斎藤知事はサイドテーブルや姫路城のレゴブロック、スポーツシューズ、のり、播州織の浴衣やジャケット、ネクタイ、スポーツウェアなどの贈答品について、もらったことを認めた上で、「多くは知事の応接室にあるか、倉庫に保管している」と説明しました。

このほか、西播磨のかき、上郡のワイン、香美町のかに、日本酒、岩津ネギ、淡路島のタマネギなどを受け取ったことがあると認めた上で、「食べものなど消費するもの、生ものなどは出先でもらって、直接家に持って帰ったことはある」と述べました。

「県民の皆さんに本当に深くおわび」

斎藤知事は県行政のトップとして一連の問題について道義的責任を感じているかと委員に問われたところ、「道義的責任というものが何かということが分からないので明確にコメントできないが、いまの県政の状況を招いているということについては、県民の皆さんに本当に深くおわびを申し上げたい」と述べました。

道義的責任「県や知事としての対応に問題はなかった」

斎藤知事は、一連の県の対応についての道義的責任を問われ、「懲戒処分の対応は県が行政機関としてやっていることであり、手続きを含めて法的な観点が大事だ。法的な問題はないと認識しており、県や知事としての対応に問題はなかった。道義的責任が指摘されているが県が行政機関として対応している以上、私としてはきちんとやっていると思っている」と述べました。

「処分手続きなどに瑕疵はない」

斎藤知事は告発文書を作成した元局長を公益通報の保護の対象にせず懲戒処分にした県の対応について「県としてこれまで懲戒処分に関することは法的にも問題ないというところでやって来ているので手続きなどに瑕疵はないと考える」と述べました。

 

元副知事が事情聴取「問題ないと思う」

疑惑の当事者である片山元副知事が事情聴取をしたことについて、斎藤知事は「私の認識としては、告発というより、誹謗中傷性の高い文書だと思っていたので、作成した人や内容の意図を含めて聴取するということは問題ないと思う」と述べました。

また、告発文に名前があがっている当事者が文書を作成した人を探すことは、告発を握りつぶそうとして行動していると感じられると問われたことに対しては、「そういう認識はないです」と述べました。

公益通報にあたるとは思っていなかった」

斎藤知事は、告発文書として調査すべきだったのではないかと問われたのに対し、「私としては文書は誹謗中傷性が高く、噂話であり、公益通報にあたるとは思っていなかった。人事課から公益通報を待って処分した方がいいと進言された認識はない」と話しました。

第3者委員会での調査「進言を受けた記憶はない」

斎藤知事は県の幹部から、今回の件に関する第3者委員会での調査を進言されたかという問いに対し、「少なくとも進言を受けたという記憶はない。話には出たかもしれないが協議をした記憶はない。積極的に彼らがやりたいという話でもなく人事課の調査で十分だという話になったと思う」と述べました。

「過去の事例から了承」

斎藤知事は「過去の事例から、公用メールをチェックするやり方があると聞いたので、わかったと了承した。事実でないことが多いのでしっかり調査して、それを証明するのが大事だと指摘した」と述べました。

「しっかり調査するよう指示をした」

告発文書について斎藤知事は、「当該文書の内容を見て、私としては問題がある文書だというふうに認識したので、それについてしっかり調査するようにという指示をした。文書の内容が私自身も事実でないことが含まれていると感じたし、いくつかの項目について片山副知事に聞いても『違います』ということだったので、誰がこの文書を作成したのかやなぜ作成したのか意図などをしっかり事案として把握するということが大事だということを指示した」と述べました。

証人尋問を終えて

 

証人尋問のあと斎藤知事は記者団に対し「すべての人に納得してもらえたかはいろいろあると思うが、自分として答えられることを精一杯答えた。厳しい指摘や批判もあったが、贈答品の問題も含めてしっかり受け止めていくことが大事だとわかった。改めるべきところはしっかりルールづくりをして対応していきたい。自分の考えをできるだけ伝えて、1人でも多くの県民の理解につながればいいと思う」と述べました。

【片山元副知事の発言】

 

 

「知事が付箋を投げた」

片山元副知事は「2月の終わりごろに、案件はよく覚えていないが、知事に相談に入った時、非常に怒り、付箋を投げた。少し厚い5ミリ程度の付箋だったと思うが、知事は真正面に向かって投げてアクリル板に当たったのをはっきり覚えている」と述べました。

公益通報の対象外 適正なものだと認識」

片山元副知事は、委員から「今は一連の告発は公益通報とすべきだったという認識はあるか」と問われたのに対し、副知事を務めていた当時の認識として「人事当局から4月4日以前に元局長が行った通報は公益通報の対象にはなっていないという弁護士の説明を受けており、それが適正なものだと認識している」と述べました。

『うそ八百』などの知事発言 「想定外でびっくり」

片山元副知事は、斎藤知事が3月27日の記者会見で告発文書について「うそ八百」などと発言したことについて「想定外でびっくりした。記者会見で知事からどういうふうに言ってもらうか、いわゆる事務的なことはよく話をしたが『思い』についてまで話をすることはなかった」と述べました。

また委員から「知事にしっかり進言することが副知事の仕事ではないのか」と問われ、「全部できたかどうか今は後悔する。反省している」と述べました。

「告発者を守らなければならない認識 なかった」

片山元副知事は、委員から「3月下旬の時点で公益通報で告発者を守らなければならないという認識はあったか」と問われ、「ありませんでした」と述べました。

また、「調査する第三者機関もあると聞いていたが、知事からは『第三者機関は時間がかかる』と否定されたと報告を受けた」と述べました。

「不正な目的なのでちゃんと調べなくてはいけないと考えた」

片山元副知事は「メールの調査の中に、『クーデターを起こす、革命、逃げ切る』というくだりがあった。斎藤政権にダメージを与える、転覆させるような計画で、選挙で選ばれた知事を地方公務員が排除するのは不正な目的なのでちゃんと調べなくてはいけないと考えた」と述べました。

「徹底的に調べてくれと」

片山元副知事は、告発文書について「3月21日に『知事室に来るように』と言われ、知事から初めて見せてもらった。知事から徹底的に調べてくれというような話があった」と述べました。

その上で「見た瞬間に、パワハラが入っているなと、私は人事の経験が長いので、これは非常にやっかいな事になるなと思った」と述べました。

公益通報者保護法に詳しい弁護士 “処分は無効の可能性高い”

 

公益通報者保護法に詳しい山口利昭弁護士は、元局長がことし3月、県議会議員や報道関係者などに告発文書を送ったことは、通報者が守られるべき外部公益通報にあたるとした上で「これまでの県の対応に通報者保護に欠ける点があったことが推認される」と述べました。

そして県が元局長を懲戒処分したことは無効となる可能性が高いという認識を示しました。

こうしたことから、県が公益通報者保護法で定められた公益通報に対応する体制整備の義務を果たせていないとして「県は法令違反の状況が続いている」と指摘しました。

百条委 奥谷委員長「引き続き調査を通じて明らかにしたい」

 

百条委員会の奥谷謙一委員長は証人尋問のあと記者会見で「元副知事と斎藤知事の尋問を行ったが、食い違いも見えてきた。第三者委員会の調査を部下から提言していることなどについては、引き続き調査を通じて明らかにしたい」と述べました。

その上で「知事の尋問を聞いていると、通報者の探索をしてしまっているので、明確に公益通報者保護法に違反していると私は認識している。知事には法的責任も生じていると考えており、委員からも『消費者庁に相談すべきではないか』という意見があるので、そういったことも踏まえて今後の対応を考えていきたい」と述べました。

維新 兵庫県議団長「党本部の幹部と意見交換したい」

維新の会兵庫県議団の岸口実団長は、県庁で記者団に対し、今後の対応について「きょうのいろいろな話を踏まえて、7日か8日くらいには党本部の幹部と意見交換したいと思っている」と述べ、不信任決議案の提出も含め、すべての選択肢を検討していく考えを示しました。

自民 兵庫県議団「辞職求めて申し入れをする」

自民党兵庫県議団は証人尋問のあと総会を開き、斎藤知事に今月12日に辞職を求めて申し入れを行うことを決めました。

県議会のすべての会派などに賛同を呼びかけるということです。

県議団幹事長の北野実議員は会見で「道義的責任や政治的な責任、それに県政の混乱に対する責任を知事がどう果たすのかということに対して辞職の申し入れをする」と述べました。

斎藤知事が申し入れを受け入れない場合は、今月19日から開かれる県議会で不信任決議案を提出することも選択肢の1つだとして、提出の時期については「補正予算案を通さないといけないので、それ以降だ」と述べました。

登庁の際に 斎藤知事「自分の認識や記憶、考えを述べたい」

 

兵庫県の斎藤知事は6日午前、県庁に登庁する際、記者団に対し公益通報に関することを含めて自分の認識や記憶、そして考えを述べたい。この間のいろいろな対応は法律に基づいて一つ一つ積み重ねてきた。県民の皆さんにできるだけ理解してもらえるようこれからも尽くしていく」と述べました。