「ほとばしる自己愛」「政治資金も下半身も管理できない」 自民党70人以上の議員を評価した一冊(レビュー)(2024年9月6日『Book Bang』) 

 007の「死ぬのは奴らだ」、原題はLive and Let Dieで、慣用句のlive and let liveの末尾をモジり、「自らは生き、他も生かせ」を「自らは生き、他は生かすな」へと変えた。
 で、ワタシの場合、見たり聞いたり考えたりするたび、この原題が必ず頭をよぎるというテーマがありまして、それは自民党。英語だとLiberal Democratic Partyで略称がLDP、この3文字がLet Die Partyに思えてならないのよ。
 この「死ぬのは奴らだ」党について、政治家70人以上への評価を切り口にレクチャーしてくれるのが、『自民党の大罪』。世は総裁レースの只中ゆえ、出走(希望)の馬や鹿に限って評定をちょと紹介しても――「ほとばしる自己愛」「ただの迷惑な人」「そもそもいかがわしい人間」「粗忽にもほどがある」「ずさんだねえ」「政治資金も下半身も管理できない男」「すがすがしいまでの天性のバカ」。
 こういう物言いが決して床屋政談の印象批評に陥らず、たとえ訴えられたとしても負けないほどの的確な断罪たりえているのは、忘れられがちな事実をあらためて並べ、それをきっちり踏まえているから。
 著者の適菜収は教養を基盤にミギやヒダリのインチキを正しく愉しく「バカ」と断じてきた巧者。今回も「生き、生かせ」の国民政党LDPが劣化を続けて「生き、生かすな」の独善結社LDPへと堕した惨状を見事に描くゆえ、まず今、読んで嗤い、選挙が迫ったら再読して怒りましょうや。
協力:新潮社 新潮社 週刊新潮
 Book Bang編集部

自民党の大罪 (祥伝社新書 702) 新書 – 2024/8/1
適菜 収 (著)
自民党の変容と日本の凋落
東西冷戦の終結が迫り、「政治改革元年」という掛け声に人々が浮かれたのが平成元(1989)年。
しかし、皮肉にもその年が自民党、日本の明暗を分ける分岐点になった。
以降の35年で日本は国力を失い、腐敗と不正が蔓延る人治国家へと成り下がることになる。
本書では、自民党の政治家を個別に検証することで、変容した党の本質を炙り出そうとするものである。
著者は、「小沢一郎がまいた種を小泉純一郎が悪用し、安倍政権という悪夢に結実した」と指摘する。
支持率が20%にも満たない政権、政党が権力を牛耳ることができる理由は何か? 
思考停止した大衆が〝悪党〟を支え続ける社会の歪な構造が明らかになる。