黒船なき令和の日本で、革命なき安逸の日々のなかで、激烈な政権交代は起きるのか?
しかし、いま変わらなければ――かならず日本は、沈む!
「『政権変容』が劇的に新しいのは、自民党がどうであろうと関係なく、野党が腹を括って決断しさえすれば次の総選挙で実現できるところです」
2024年の選挙から、グレートリセットは始まるのだ。
7月19日発売の最新刊『政権変容論』(講談社刊)から、特別に内容を抜粋してお届けしていこう。
『政権変容論』連載第29回
勝者は「野党代表」ではない
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―ただ、各野党の支持層からは、反対の声が出るのでは。たとえば、「立憲の政策に賛成だったのに、予備選挙で負けたからって、維新なんかに票は入れたくない!」とか。
橋下:いいんですよ、それで。
仮に予備選挙で、維新候補者が勝ったとする。そこで本選挙の維新候補者に対して、熱烈な立憲支持者が「俺が蛇蝎のごとく嫌っている維新の候補者に投票することなんかできない!」と思う場合、べつに無理やり維新に投票しなくてもいいんです。
この点も、野党間予備選を否定する人たちがよく言う、勘違いの批判です。
野党代表
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橋下:野党間予備選で敗北した側は、本選挙においては、予備選に勝利した候補者を応援しないから意味がないという批判。
あくまでも「本選挙を与野党一騎打ちに持ち込む」ためだけの候補者一本化ですから、応援したくない候補者を応援する必要はない。
それでも予備選を勝利した候補者にとっては、十分すぎるメリットがあります。それは、無党派層からの支持をバラバラにせず、自分に取り込める可能性が激増するメリットです。
本書でも口が酸っぱくなるほど言っていますが、野党各党の支持率は一けた台。予備選挙に勝利した維新候補者は、本選挙で立憲支持者の票をあてにする必要はないし、予備選挙に勝利した立憲候補者も、本選挙で維新支持者の票をあてにする必要はない。
お互いに相手側の支持率一けた台の票などあてにせず、「現在支持する政党はない」と言う無党派層の票をかき集めることに集中するんです。
無党派層を狙え
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橋下:野党各党は、目の前に集まってくれる数千人の支持者を強く意識するのでしょうが、日本全体で見れば立憲民主も維新も積極的支持者はごくわずか。しつこいですが、世論調査の支持率は一けた台。
そんなものを取りにいくより、主要野党である維新や立憲は、6割以上にも上る、支持政党なしの無党派層を狙いにいくべきなんです。この層は、自民、維新、立憲民主にこだわりはありません。
本選挙で与党対野党の一騎打ちの構図に持ち込めば、無党派層はどっちがマシかで判断します。野党各党は自分たちの掲げる政策によって積極的な支持を得たいと思っているようですが、これまでの世論調査を見れば、野党の政策に大きな支持が集まっているわけではないことは明らか。
予備選で勝利した野党候補は、予備選で対決した野党候補の支持層が付いてきてくれないことを嘆くのではなく、自党の支持層と無党派層、さらには自民党にお灸を据えたい自民支持層をしっかりとつかむことに集中すればいいのです。
自民がマシで入れるのもいい
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―最悪、「自民のほうがマシ!」なら、本選挙で自民に票を入れてもいい、という発想は画期的ですね。
だから予備選挙をやって野党の候補者を一人にしたところで、予備選で対立した野党支持層が付いてきてくれないのであれば本選挙で与党には勝てないと信じ込んでしまっているのでしょう。
これは完全に間違っています。
野党が狙うべきは、6割以上を占める支持政党なしの無党派層なのです。彼ら彼女らが積極的に支持してくれることを狙うのではなく、自公よりもマシだよね、という「消極的支持」で十分なのです。
野党間予備選挙とはつまるところ、日本の政党、政治家に何の期待も持たず、今さら政権交代など起こるはずもないと端から諦め、投票所に足を運ぶことすら諦めてしまっている人たちに、本選挙での「与党」対「野党」の一騎打ちという、極めてシンプルな戦いを見せ、どちらがマシかを判断してもらうのが目的です。
政権変容論 (講談社+α新書 879-1C) 新書 – 2024/7/19
橋下 徹 (著)
【橋下徹からのメッセージ】
政権「変容」? なんだそのワードは? と思われるでしょう。
それもそのはず、これは僕がつくった造語です。
普通は政権「交代」というワードを使います。
野党政治家は政権「交代」を目標にし、加えて現政権に批判的なメディア・評論家や学者たちも
口を開けば政権「交代」の必要性を説きます。
しかし、国民は本当に、政権「交代」を心底求めているのでしょうか?
漠然と政治が変わってほしいと思っているものの、自民党に政権を完全に去ってもらって、
今の野党に政権を担ってもらいたいとまで思っているのか。
ここが本書における、僕の問題意識の核心です。
【出版社からのメッセージ】
黒船なき令和の日本において、
革命なき安逸の日常のなかで、
はたして激烈な政権交代は起きるのか?
しかし、いま変わらなければーー
かならず日本は、沈む!
国民の声なき真意を掴み続ける百戦錬磨の戦略家、橋下徹。
時代を見定め、歴史を洞察し、日本人の本質を透徹した先に見えた
悪魔的リアリズム=政権変容。
2024年の選挙から、グレートリセットが始まる!
【本書の内容】
それをもって「政権交代近し!」と色めきだつメディアや評論家もある。
しかし、日本の政治をめぐる状況は、はそんな単純なものだろうか?
自民党の敗北は自滅であって、野党がみずからの力で勝利したとは言いがたい。
「政権交代」の風は本当に吹いているのか?
そうとは言えないことを、先日の都知事選が証明したのではないか。
「だからこそ、交代ではなく変容だ」
橋下徹はそう主張する。
今の自民党政権には嫌気がさしているけれども、
だからといって野党に政権を託すまでは考えていない。
これが国民の感覚ではないのか。
現政権がそのまま維持されることは嫌だが、交代までは求めていない。
国民が漠然と望んでいるものの正体を、橋下は本書で「政権変容」と名付ける。
「政権変容」が劇的に新しいのは、自民党がどうであろうと関係なく、
野党が腹を括って決断しさえすれば、次の総選挙で実現できるところだ。
そして「自公過半数割れ」が起きたとき、野党はどう振る舞うべきか?
どうすれば政治を大きく変えられるのか?
本書ではその道筋を緻密かつ大胆に解説している。