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黒船なき令和の日本で、革命なき安逸の日々のなかで、激烈な政権交代は起きるのか?
しかし、いま変わらなければ――かならず日本は、沈む!
百戦錬磨の戦略家、橋下徹(55歳)。時代を見定め、歴史を洞察し、日本人の本質を透徹した先に見えた悪魔的リアリズム、それが「政権変容論」だ。橋下氏は言う。
「『政権変容』が劇的に新しいのは、自民党がどうであろうと関係なく、野党が腹を括って決断しさえすれば次の総選挙で実現できるところです」
2024年の選挙から、グレートリセットは始まるのだ。
7月19日発売の最新刊『政権変容論』(講談社刊)から、特別に内容を抜粋してお届けしていこう。
『政権変容論』連載第21回
まず狙うべきものは
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―いよいよ、「政権変容」の具体論に入っていきましょう。来るべき次の衆議院総選挙において、野党に必要な戦略は何でしょうか。
橋下:まず主要な野党はどこもかしこも、自分たちの政党支持層に向けて必死にアピールをしています。しかし、野党各党の支持率など、所詮は一けた台。自分の支持層に向けて改めてアピールしたところで日本全体は動きません。
「自分の支持層向けのアピールではなく、自分たちに無関心な層へのアピール」
野党各リーダー層が頭を切り替えなければならないしょっぱなのポイントはここです。たいがいの政党のトップは、自分たちの支持層に受けることを一番に考えてしまいますから。
特に維新の会は、関西では自民党を上回る圧倒的な約20%超えの支持率があります。それなのに全国平均になると一けた台に沈んでしまうということは、関西以外の支持率は驚くほど低いものだと推察できます。
野党は狙うべき層を間違えている
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―野党各党は、そもそも「狙うべき層」を間違えている、と。
橋下:今、野党に追い風を吹かせるために必要なことを整理すると次の三つが特に重要です。
1 徹底して自らの襟を正す行動をとること
2 地方行政で実力を示すこと
3 「左右対決」ではなく「新旧対決」に持ち込むこと
まず1「徹底して自らの襟を正す」ですが、いま僕が心配しているのは、自民党の裏金問題がブーメランとして野党に返ってこないか、ということ。口角泡を飛ばして自民党批判をしていた自分たちが、実は同じ穴のムジナだったことがバレる瞬間ほどみっともないことはありません。
パーティー券を、いつ誰に何枚売ったのか、その枚数と収入金額は合っているのか。こうしたところについて、野党は大丈夫かなと不安になってくるんです。
僕は今回の自民党の裏金問題に関しては野党にしっかり自民党を追及してもらいたいけれど、たとえば旧文通費の問題に関しては、立憲民主党などは自民党と同じく領収書を公開していません。彼らは「自民党が公表しない限り、自分たちだけが公表すると不利になる」と言いますが、そんな言い訳、国民にはまったく通用しませんよ。
「なんだよ、結局アンタらも同じかい!」となってしまう。
維新だって、政策活動費という領収書公開不要のおカネを扱っています。そうなると、国民からすると「自民と何が違うのか?」となってしまう。「結局、目くそ鼻くそやん」と思われても仕方がない。
カネの流れをクリーンに
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橋下:僕は維新に対して、「旧文通費だけでなく政策活動費についても領収書を公開すべきだ」と以前から提言していました。それに対して維新から返ってきたのは「組織には領収書を公開しないで使えるカネも必要だ」というロジックでした。それでは自民党と同じです。
「カネの流れがクリーンでない」ことが現在の自民党批判の核になっているのに、野党が似たり寄ったりのカネの使い方をしていたら、まったく説得力が生まれない。
ここは潔く、「スミマセン!これまでは領収書を公開していませんでした。でもこれからは、自分たちが率先して開示します。おカネの流れをより透明化した政治を目指します!」と言うべきで、この姿勢こそが無党派層を惹きつけるカギになると思います。
「自民=旧弊の政治スタイル」 vs.「維新や立憲=国民と同じ金銭感覚の新しい政治スタイル」という違いが明らかになり、有権者に向けた強力なアピールになるはずです。
『今の野党は「履歴書の無い就活生」のようなもの...橋下徹が自身の体験を踏まえて語る、「野党の必要な経験」』へ続く