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黒船なき令和の日本で、革命なき安逸の日々のなかで、激烈な政権交代は起きるのか?
しかし、いま変わらなければ――かならず日本は、沈む!
百戦錬磨の戦略家、橋下徹(55歳)。時代を見定め、歴史を洞察し、日本人の本質を透徹した先に見えた悪魔的リアリズム、それが「政権変容論」だ。橋下氏は言う。
「『政権変容』が劇的に新しいのは、自民党がどうであろうと関係なく、野党が腹を括って決断しさえすれば次の総選挙で実現できるところです」
2024年の選挙から、グレートリセットは始まるのだ。
7月19日発売の最新刊『政権変容論』(講談社刊)から、特別に内容を抜粋してお届けしていこう。
『政権変容論』連載第15回
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自由民主党が1 9 5 5年に政権を握ってから、野党に下野したのは二回だけ。93年と2 0 0 9年です。
93年の一度目の政権交代は、自民党が選挙に敗れ、非自民・非共産8党派による連立政権が誕生しました。日本新党代表の細川護熙氏が、第79代内閣総理大臣として指名されたのです。09年の二度目の政権交代は、まだ皆さんの記憶にも新しいと思います。野党第一党だった民主党が総選挙で過半数を取って政権奪取を実現し、社民党、国民新党とともに連立与党を形成しました。
しかし、この二回を除けば、戦後のほとんどの期間を、自民党が与党第一党として政権に君臨し続けてきたのです。
「政治とカネ」問題の温床
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―ただし、こうした状況を打開しようと、過去には改善の努力も試みられました。一回目の政権交代時には、今後は「政権交代」が頻繁に起こることを目指し、細川内閣が公職選挙法の改正を実現し、小選挙区比例代表並立制を実現した(94年)。
しかし、あれから30年。当時の目論見が功を奏したとは言いがたい。橋下さんはこうした政治の流れを、どう分析されていますか。
橋下基本的に「政権交代」を目指した94年の公職選挙法の改正を、僕は大いに評価しています。かつての中選挙区制は、それこそ「政治とカネ」問題の温床でした。候補者が広い選挙区を走り回り、駅前演説や講演を行うには、多大な体力、気力、人力、そして経済力が必要になる。同じ自民党内から各派閥の候補者が乱立すれば、党内派閥争いも激化します。それが金権政治や密室政治を生んだ。
そうした悪習慣を払拭しようとして実現した公職選挙法の改正は、「派閥中心選挙」から、「政党・政策本位の選挙」への移行が掲げられました。国民と政治家の意識変革を目指したのです。それ自体はとにもかくにも、評価に値すると思います。
でも、だからと言って、あの94年の改革が無駄だったとは思いません。近年、またぞろ「昔の中選挙区制のほうがよかった」という意見も見聞きしますが、僕は賛同しません。
政治とカネも以前よりマシに?
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橋下だって今のほうが確実にまだマシですから。僕は中選挙区制時代には政治家を経験していませんが、かつての金権政治を見聞きするに、本当にひどいものだったようです。あの頃の政治家って、ものすごい豪邸に住んでいた人も多かったですからね。政治家は公僕だという認識が多少なりとも広まった今の時代のほうがずっとマシ。
―たしかにかつての派閥幹部はたいてい大豪邸に住んでいましたね。取材で訪れても、門から玄関までの距離が異様に長いという……。それが昨今は、派閥幹部クラスでも赤坂の議員宿舎住まいの人が増えています。相対的に見ると「政治とカネ」問題も、以前よりはマシになってきたのかもしれない。
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