「ザ・派閥」とやゆされた林芳正官房長官 「解散しても関係は続く」と…結局何も変わらない自民党総裁選(2024年9月4日『東京新聞』)

 
 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)で、「脱派閥」とはかけ離れた実態があらわになりつつある。3日に立候補を表明した林芳正官房長官(63)は、岸田派ナンバー2の座長を務め、同派にいた議員を中心に支援を受ける。河野太郎デジタル相(61)や、4日に出馬表明する茂木敏充幹事長(68)も、派閥が支持基盤になりそうだ。岸田文雄首相が打ち出した派閥解散の意義が改めて問われている。

◆解散決めたと言っても安倍、茂木、二階の3派閥は存続

記者会見で自民党総裁選への立候補を表明する林芳正官房長官=衆院第2議員会館で(佐藤哲紀撮影)

記者会見で自民党総裁選への立候補を表明する林芳正官房長官衆院第2議員会館で(佐藤哲紀撮影)

 林氏の陣営は、出馬表明に向け、8月下旬から、少なくとも3回の会合を開いたが、各回の出席者約20人のほとんどは岸田派議員だった。林氏以外の候補を支援する中堅議員は、「林さんは派閥の支援を受ける『ザ・派閥』の候補だ」と冷ややかな視線を向ける。
 林陣営は「派閥色」を消そうと躍起だ。出馬表明当日には、岸田派の政治団体としての解散届を総務省に提出し、選対幹部には無派閥議員をあえて登用した。それでも林氏は、出馬会見で「議員生活のほとんどを宏池会(岸田派)の皆さんと切磋琢磨(せっさたくま)してきた。派閥はなくなってもその関係は続くものだ」と配慮をにじませた。
 首相は1月、派閥パーティーの裏金事件を受け、唐突に岸田派の解散を表明。同月の党政治刷新本部の中間取りまとめでも、派閥の「解消」を打ち出した。それだけに、党内からは「派閥解散を訴えた張本人の首相が率いた派閥の候補が、派閥べったりの選挙をやろうなんて、国民にどう見られるか考えたことがあるのか」(中堅議員)と疑問の声ももれる。
 自民内にあった6派閥のうち、麻生派以外は解散を決定したが、法的には安倍、茂木、二階の3派閥は存続している。林氏だけでなく、河野氏は所属する麻生派麻生太郎副総裁(会長)をはじめ、同派議員の支援を受ける。茂木氏も、自身が会長だった茂木派議員が支持母体となる。同派議員は「当然茂木派が支援の中心になる。派閥を通じたお付き合いがあった人たちのかたまりだから」と語った。(川田篤志

 派閥の解散 政治資金規正法によると、派閥などの政治団体が解散する場合、解散の日から30日以内に、総務相都道府県選挙管理委員会に文書で届け出る必要がある。収支や資産も報告しなければならないが、規正法には残った財産に関する規定がないため、清算時の透明性の確保に課題がある。