アフリカ外交 日本の強み生かし発展支えよ(2024年8月26日『読売新聞』-「社説」)

 アフリカは高い潜在力があるとはいえ、政情不安や貧困といった課題を抱えている国が多い。医療や教育の支援など、日本の強みを生かしてアフリカの発展を後押しすべきだ。
 日本が主導するアフリカ支援の枠組み「アフリカ開発会議」(TICAD)の閣僚会合が東京で開かれた。来年8月に横浜で開く首脳級会合の準備が目的だ。
 上川外相や47か国の外相らが出席した閣僚会合では、社会、平和と安定、経済の3分野で協力を進めていくことを確認した。
 新たな取り組みとして、日本とアフリカの企業や投資家を集めた会合を開き、アフリカへの投資や企業の進出に向けて議論した。
 2050年にアフリカ大陸の人口は、現在の15億人から24億人強となる見通しだ。アフリカは石油や鉱物などの天然資源が豊富で、世界経済の「最後のフロンティア」と呼ばれている。
 一方、南アフリカやナイジェリアなどを除けば、食料を自給できず、外国からの輸入に頼っている国は多い。財政難から教育や医療が行き届かない地域もある。
 中部では最近、感染症のエムポックス(サル痘)が流行し、多くの死者が出ている。
 こうした状況で、政府がいくら日本企業にアフリカへの進出や投資を呼びかけても、企業側は二の足を踏んでしまうだろう。
 政府は、アフリカのビジネス環境を整えることが急務だ。
 人口増を見据え、農業技術の研修を充実させて生産性の向上を図っていく必要がある。広大な地域でも受診可能な遠隔医療システムを構築することで、衛生環境の改善を図っていくのも一案だ。
 アフリカ各地で医療や教育などの支援活動を行っているボランティアと連携し、現地のニーズに即した支援を強化していきたい。
 近年は、アフリカの成長を見込んで、ロシアや中国などが関係強化を図っている。日本は1993年にTICADを創設し、アフリカ各国の国づくりを支援してきた。長年培ってきた信頼関係は、日本の貴重な外交資産だ。
 国連では2年前、ウクライナ侵略を受けた対露非難決議を巡り、多くのアフリカ諸国が棄権した。ロシアに食料や武器を頼っている国が少なくないことが影響したのだろう。欧米主導の国際秩序への反発もあったのではないか。
 大国が力ずくで領土を奪うことを許せば、アフリカも危機に陥りかねない。日本は法の支配の重要性を訴えていくことが大切だ。