中東や欧州の戦乱では人命が奪われているだけではない。貴重な文化財も破壊されつつある。
歴史を今に伝える建物や芸術品を後世に受け継ぐため、国際的な取り組みを強化すべきだ。
パレスチナ自治区ガザにある遺跡「テル・ウム・アメル」について、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)は7月、世界遺産に登録した。同時に、戦乱や災害によって貴重な価値が失われかねない「危機遺産」に指定した。
ローマ帝国時代を起源とするこの遺跡は、アジアとアフリカを結ぶ交易路に位置し、キリスト教の修道院などがある。保存活動が行われていたが、イスラエル軍とイスラム主義組織ハマスの戦闘で周辺が爆撃され、中断している。
危機遺産への指定は、国際社会の関心を高め、保存・修復のための資金や技術の提供を幅広く呼びかける狙いがある。
ロシアは、聖ソフィア聖堂がそびえるキーウ中心部や、同じく世界遺産に登録されている南部オデーサ歴史地区に、繰り返し攻撃を加えている。
ウクライナをロシアの一部とみなすプーチン大統領が、ウクライナの独自の文化やアイデンティティーを否定するため、あえて攻撃対象にしているのは明らかだ。人類が共有すべき歴史や文化に対する 冒涜ぼうとく である。
一日も早く戦乱に終止符を打ち、日本の知見や技術を中東や欧州でも生かしたい。