議員によるハラスメント根絶へ 三田市議会でパワハラ防止条例制定/兵庫県(2024年8月20日『サンテレビ』)

兵庫県三田市は、市議会議員による市の職員などへのパワハラを根絶するため、ハラスメント行為が認められた議員の名前を公表するなどの条例を議会で制定し、8月20日から施行しました。
 
兵庫県三田市では、2024年3月に「市議会議員が幹部職員の人格を否定するような発言をした」などとする公益目的通報があったことを発端にハラスメントが問題視されていました。
三田市議会
その後、三田市が管理職を対象にしたアンケートでは約4割の職員が「ハラスメントを受けたことがある」と回答していて、市議会は委員会を立ち上げハラスメントの根絶に向けて議論してきました。
8月20日の定例会では委員会がまとめた「三田市議会ハラスメント根絶条例」の案が提出され、全会一致で可決され、8月20日から施行されました。
条例には、議会事務局に被害の相談や申し立てを受け付ける窓口を設置することやハラスメントが認定された場合は、加害議員の名前を公表することなどが盛り込まれ職員から議員へのハラスメントも含まれています。
議員によるハラスメント防止条例の制定は兵庫県内では洲本市加西市に次ぎ、3例目となります。
 
 

議員提出議案第1号
 
 
   三田市議会ハラスメント根絶条例の制定について
三田市議会ハラスメント根絶条例を次のとおり定める。
令和6年8月20日提出
                 三田市議会議員 肥 後 淳 三
                    同 林 政 徳
                    同 松 岡 信 生
                    同 福 田 秀 章
                    同 北 本 節 代
                    同 井 上 昭 吾
                    同 水 元 サユミ
三田市条例第42号
三田市議会ハラスメント根絶条例
ハラスメントは、基本的人権及び個人の尊厳を著しく傷つけ、職員等の業務及び議員活動並びに市民の福祉に支障をきたし、議会及び議員の社会的信用及び信頼を失う行為であるとともに、市民サービスの低下につながる行為である。
三田市議会及びその構成員である議員は、市民の負託により二元代表制の一翼を担う重責を理解し、ハラスメントを断じて許さず、率先してこれを根絶し、職員等と議員が安心して市民のため職務を遂行できる環境を確保することによって、市民
から信頼され続ける議会を実現することを強く決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、全ての議員が互いの人格を尊重し、信頼し合い、議員及び議会としての役割を十分に発揮するため、議員及び職員等によるハラスメントを防止し、根絶するための処置を講じ、市民から信頼され続ける議会の実現を目的と
する。
(定義)
第2条 この条例において「ハラスメント」とは、次に掲げる行為をいう。
(1) パワーハラスメント 職務に関する優位的な関係を背景として行われる、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動により、相手方に精神的又は身体的な苦痛を与え、相手方の人格、尊厳又は職務環境(議員としての活動を行う上での
環境を含む。以下同じ。)を害する行為
(2) セクシャルハラスメント 性的な言動により相手方に不快感を与える行為又は相手方の職務環境を害し、若しくは勤務(議員としての活動を含む。以下同じ。)条件に不利益を与える行為
(3) 妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント 妊娠したこと、出産したこと、妊娠若しくは出産に起因する症状により勤務できないこと等に対する言動又は妊娠、出産、育児若しくは介護に関する制度若しくは措置の利用に対す
る言動により相手方の職務環境を害する行為
(4) SOGI(ソジ)ハラスメント 性的指向性自認等に関して、侮辱的、差別的な言動により相手方に精神的若しくは身体的な苦痛を与える行為(5) その他のハラスメント 相手方に精神的又は身体的な苦痛を与え、相手方の人格、尊厳又は職務環境を害する行為であって、前4号に該当しないもの2 この条例において「職員等」とは、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条第2項に規定する一般職に属する職員並びに同条第3項第1号、第1号の2、第2号、第3号、第3号の2、第5号及び第6号に規定する特別職に属する職員(議員を除く。)をいう。
(適用範囲)
第3条 この条例は、次の各号に掲げる関係において生じたハラスメントについて適用する。
(1) 議員から職員等に対するハラスメント
(2) 議員から議員に対するハラスメント
(3) 職員等から議員に対するハラスメント
(議員の責務)
第4条 議員は、市民の代表として常に高い倫理観を持ち、ハラスメントの根絶に努めなければならない。
2 議員は、ハラスメントが行為者の意図とは関係なく生じ得ること及び議員と職員等が特殊な関係にあることを自覚し、職員等及び他の議員を個人として尊重することを通じて、誠実かつ公正な活動に努めなければならない。
3 議員は、ハラスメントに当たる言動を行っていると疑われたときは、自ら誠実な態度をもって事実を明らかにし、説明責任を果たさなければならない。
4 議員は、他の議員がハラスメントに当たる言動を行っていると認められる事態に遭遇したときは、当該議員に対し厳に慎むべき旨を指摘するよう努めるとともに、議長に当該事態について報告しなければならない。
5 議員は、職員等が他の議員に対しハラスメントに当たる言動を行っていると認められる事態に遭遇したときは、当該職員等に対し厳に慎むべき旨を指摘するよう努めるとともに、議長に当該事態について報告しなければならない。
(議長の責務)
第5条 議長は、ハラスメントの根絶に努めるとともに、ハラスメントに起因する問題の解決に必要な措置を迅速かつ適切に講ずるものとする。
2 議長は、ハラスメントに関する相談に的確に対応するため、必要な相談体制の整備に努めるものとする。
(研修等)
第6条 議長は、ハラスメントの根絶のため、議員に対し必要な研修等を行うものとする。
(行動指針)
第7条 議長は、ハラスメントの根絶に関する行動指針を定め、議員に対し周知徹底を図るものとする。
(議長職務の代行)
第8条 議長が次条第1項に規定する相談又は申立ての対象(以下「対象者」という。)となったときは、副議長がこの条例に規定する議長の職務を行うものとする。
2 議長及び副議長がともに対象者となったときは、対象者に該当しない年長の議員が議長の職務を行うものとする。
(報告、相談及び申立て等)
第9条 ハラスメントによる被害を受けたと感じる、又はその事実があると思料する職員等又は議員は、議長に対し、ハラスメントに関する相談をし、その内容を書面又は電子メールにより申し立てることができる。
2 議長は、第4条第4項及び第5項の規定による報告並びに前項の規定による相談及び申立ての窓口を議会事務局に置くことができる。
3 議長は、第1項の規定による申立てを受領したときは、その内容について別に定める基準に該当するかどうかを確認し、受理又は不受理の決定を行うものとす
る。
(調査)
第10条 議長は、前条第3項の規定による確認の結果、前条第1項の規定による申立てを受理したときは、事実関係の調査を行うものとする。
2 議長は、前条第3項の規定による確認及び前項に規定する調査に関する補助事務を予め指定した議会事務局職員に行わせることができる。
(執行機関等への委任)
第11条 議長は、前条第1項の規定により調査を行うに当たり、対象者が職員等である場合、市長その他の執行機関(以下「執行機関等」という。)に事実関係の調査に関する事務を委任することができる。
(執行機関等の協力義務)
第12条 執行機関等は、前条の規定による調査に関する事務の委任を受けた場合は、第10条第1項に規定する調査に協力しなければならない。
(ハラスメント審査会)
第13条 議長は、ハラスメントを根絶するための措置及びハラスメントが行われた場合に適切に対応するための措置に関し、外部の有識者からなる第三者委員会としてハラスメント審査会(以下「審査会」という。)を置くことができる。
2 議長は、前項に規定する審査会にハラスメントの認定及びハラスメントに適切に対応するための必要な措置について諮問することができる。
3 議長は、第10条第1項に規定する調査を審査会に委任することができる。
4 審査会の組織及び委員その他審査会に関し必要な事項については、議長が別に定める。
(議員の協力義務)
第14条 第9条第1項に規定する申立てに対象者として申し立てられた議員は、第10条第1項に規定する調査、必要な資料の提供、審査会への出席等を求められたときは協力しなければならない。
(職員等の協力義務)
第15条 第9条第1項に規定する申立てに対象者として申し立てられた職員等は、第10条第1項に規定する調査、必要な資料の提供、審査会への出席等を求められたときは協力しなければならない。
(弁明)
第16条 第14条に規定する議員及び前条に規定する職員等は、審査会において書面により弁明することができる。
(公表等)
第17条 議長は、第13条第2項の規定による諮問に係る答申を受け、議員によるハラスメントを認定した場合は、会派代表者会を開き、当該ハラスメントを行った議員の氏名等を公表し、その他必要な措置を講ずるものとする。
2 議長は、第13条第2項の規定による諮問に係る答申を受け、職員等による議員に対するハラスメントを認定した場合は、執行機関等に対し必要な措置を講ずるよう要請するものとする。
3 議長は、第14条の規定により協力を求められた議員が調査等に協力しなかったときは、その旨を公表するものとする。
4 議長は、第1項の規定により議員の氏名等を公表し、その他必要な措置を講ずるときは、審査会に諮問するものとする。
(被害者等のプライバシーの保護)
第18条 議員は、ハラスメントの被害者及び関係者のプライバシーの保護に十分配慮し、当該ハラスメントに関し職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
2 議員及び職員等は、第4条第4項及び第5項の規定により報告を行った者並びに第9条第1項の規定により申立てを行った者を特定する行為を行ってはならない。
(委任)
第19条 この条例の施行に関し必要な事項は、議長が別に定める。
付 則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(適用区分)
2 この条例の規定は、この条例の施行の日以後に行われたハラスメントについて適用する。
(検証)
3 議会は、この条例の施行後3年を経過したときは、この条例の施行の状況について検証し、必要があると認める場合は、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。