官房機密費「受け取らなかった人が1人だけいる」剛腕政治家が明かしたジャーナリストの名前(2024年8月17日『ダイヤモンド・オンライン』)

Photo:JIJI

 歴代の総理秘書官がカネを持ってくる度に受け取りを断固拒否してきた1人のジャーナリスト。総理大臣にケンカを売っても、この世界で生き残れたのはなぜか。話は田中角栄首席秘書官が100万円を持ってきた日まで遡る。(構成/梅澤 聡)

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この連載は、派閥論の名著と名高い渡辺恒雄氏の『派閥と多党化時代』(雪華社)を復刊した『自民党と派閥』(実業之日本社)を事前に読んでもらったうえで取材をしています(一部を除く)。
● ある日、田中角栄首席秘書官が100万円持ってきた

 ――野中広務さんが、官房機密費について記者団に対し、「政治評論家やジャーナリストにカネを配っていたけれど、受け取らなかった人が1人だけいる。それが田原総一朗さん」と話したことがありました。これは事実ですか?

 事実です。小渕内閣のとき、野中さんの使いの人が1000万円持ってきたので断りました。「総理大臣からのカネを受け取らない」というのは、つまり「総理大臣にケンカを売る」ってことですから、その後は一切取材ができなくなることを覚悟しなきゃいけない。にもかかわらず、なぜ僕が断ることができたのかというと、田中角栄さんが総理だったときの一件があるからです。

 ある日、田中角栄首席秘書官が100万円持ってきたんです。僕が「受け取るわけにはいかない」と言うと、その秘書官が「受け取りを拒否したなんて言ったら、きっとオヤジは怒るでしょう。田原さん、オヤジを怒らせたら、自民党だけじゃなく共産党以外のすべての党で取材ができなくなりますよ」と言うんです。

 それでも僕が頑として受け取らないものだから、秘書官は諦めて帰っていった。すると、その2日後に電話がかかってきて、「田原さん、オヤジがOKしたぞ!」って言うんです。なぜかはわかりませんが、田中角栄という人は懐の深い人だったんですね。

 それ以来、歴代の総理秘書官がカネを持ってくるたびに僕は「田中さんに断ったのに、あなたのカネを受け取るわけにはいかない。田中さんを裏切ることになってしまう」と言って断ってきました。

 ――企業団体献金について、田原さんはどのように考えていらっしゃいますか?

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