存在の危機に現れた「救世主」…「自民党 ぶっ壊す」 平成13年4月 自民党総裁選プレーバック④(2024年8月16日『産経新聞』)

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平成13年の自民党総裁選で街宣車から手を振る小泉純一郎氏(右)と応援に駆けつけた田中真紀子氏=東京・池袋東口
自民党は平成10年7月の参院選で14議席減の惨敗を喫し、首相の橋本龍太郎は在職2年半で辞任した。直後の総裁選で、最大派閥の小渕派は会長・小渕恵三の擁立を決めたが、梶山静六が同派を離脱して無派閥で出馬。三塚派からも小泉純一郎が名乗りを上げた。
 
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■「凡人、軍人、変人」
人気者の田中真紀子が「凡人、軍人、変人」と評した三つどもえの争いは、下馬評通り「凡人」の小渕が制した。小渕は参院で与党が過半数割れした「ねじれ国会」解消のため、自由、公明両党を連立に引き込んで現在の自公連立の礎を築く。11年9月の総裁選でも加藤紘一山崎拓を破り再選を果たしたが、自由党の連立離脱で政局が混乱する中、脳梗塞に倒れた。
緊急事態を受け、自民は有力者5人が協議して幹事長の森喜朗を後継に据えると合意した。森は総裁選を経ずに両院議員総会で総裁に選出された。これが「密室談合」と批判され、森政権は、まれにみる不人気政権となる。
森の舌禍や「政治とカネ」の問題などが重なり、13年2月の産経新聞とフジニュースネットワーク(FNN)の合同世論調査内閣支持率は6・9%に低迷した。望ましい政権として「自民を含まない連立」との回答が44%を占めた。森は在任1年で辞意を表明し、後継を選ぶ総裁選には橋本、小泉、亀井静香麻生太郎が名乗りをあげた。
小泉は過去2回の総裁選で、結果的に「かませ犬」的な役回りに甘んじており、3度目の出馬も当初は有力候補とみなされていたわけではなかった。当時の産経新聞は「今回手を挙げておかなければ、次に立つ理屈がなくなる」という小泉陣営の声を紹介し「次の次」狙いが真意だと報じた。「大本命」と評されたのは元首相の橋本だった。
小泉劇場に熱狂
ところが小泉は「自民党をぶっ壊す」と訴え大ブレークを果たす。4月の総裁選では地方票の9割に当たる123票を獲得し、地すべり的な大勝を収めた。直後の参院選や17年の「郵政解散」による衆院選も勝利に導いた。ただ、派閥構造など自民の体質は温存された。
小泉劇場の熱狂から約20年を経た今、自民はまた「政治とカネ」で危機的状況にある。首相の岸田文雄は派閥解散の荒療治に踏み切ったが、国民の評価はついてこない。「救世主」を求める党内世論は、総裁選に意外な結末をもたらす可能性もある。(敬称略)
 
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