岸田首相が14日に退陣表明したことで、少子化対策や対米外交など内政・外交の両面で積み残された難しい課題は次期首相に引き継がれることになる。
衆院選への懸念、岸田首相の「決断」に大きく影響…情勢厳しく「辞めることでしか党は守れない」
岸田内閣は人口減少問題を「日本社会最大の戦略課題」と位置づけ、少子化対策に注力してきた。2023年の合計特殊出生率が1・20と過去最低となる中で、出産育児一時金を原則42万円から50万円に引き上げ、児童手当の所得制限の撤廃も決めた。
「対策を小出しにせず全体で出した」(内閣官房幹部)こともあり、政府は対策の安定財源として28年度までに約3・6兆円を確保する予定だが、そのための歳出改革などの成否は今後の政権に託される。社会保障改革では25年に公的年金制度改革も控えている。
経済対策の行方も焦点だ。岸田首相は賃上げを重視し、最低賃金の引き上げや物価の影響を差し引いた実質賃金のプラスにこだわってきた。ロシアのウクライナ侵略などによる歴史的な物価高が続いており、経済の好循環に向けた継続的な対策が問われる。
自民党派閥の「政治とカネ」の問題を受け、今年6月には改正政治資金規正法が成立した。改正法の付則には、規正法違反で処罰された場合に政党交付金を減額する措置や、政治資金を監視する第三者機関の設置が盛り込まれたが、今後の対応は決まっていない。
一方、外交面では、11月の米大統領選を経て誕生する新たな米大統領との関係構築が次期首相の最重要課題となる。特に「米国第一主義」を掲げる共和党のトランプ前大統領の返り咲きに備え、日米関係が揺らぐことのないような人脈作りが急務だ。
新政権は、東・南シナ海での強引な海洋進出や、台湾への軍事的な威圧を続ける中国との関係立て直しにも直面する。北朝鮮を巡っては、日本人拉致問題に加えて核・ミサイルの包括的解決を日本側は掲げているものの、対話機運の醸成は容易ではない。
緊迫する東アジアの安全保障環境を巡り、岸田政権は22年12月に「国家安全保障戦略」などの3文書を改定し、防衛力の抜本的強化を打ち出した。防衛費の大幅な増額に向けた財源の確保も課題として残る。