国会閉会と岸田首相 政権の機能不全あらわに(2024年6月22日『毎日新聞』-「社説」)
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「政治とカネ」の問題が焦点となった通常国会が閉会する。
裏金事件の実態解明、関係者の処分、再発防止策としての規正法改正のいずれにおいても、政権は逃げ腰の対応に終始した。
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衆参両院の政治倫理審査会では、安倍派幹部らは裏金作りへの関与を否定し、言い逃れのような答弁を繰り返した。
関係議員の処分は、基準があいまいだった。岸田派の元会計責任者が立件されたにもかかわらず、なぜ首相が処分されないのかという不満は、今も党内外に充満している。
不透明なカネの象徴である「政策活動費」の速やかな全面公開や廃止は実現せず、野党が要求する企業・団体献金の全面禁止は、検討さえされなかった。
「政治とカネ」以外でも、迷走が続いた。
3兆6000億円規模が投じられる少子化対策の財源確保策として、「子ども・子育て支援金」制度が創設された。首相が「実質的な追加負担はない」と強調したことから、必要な施策を行うための負担を誰にどう求めるかという議論が深まらなかった。
政権運営からは長期的な視点が欠けたままだ。問題の本質に背を向ける首相の姿勢は、政策決定プロセスを国民から見えにくくしている。
自民の地方組織や所属国会議員からも、首相の退陣を求める声が上がり始めている。その場しのぎの政権運営を続けていては、国民の政治不信は募るばかりだ。民主主義にとって危機的な状況と言わざるを得ない。
通常国会閉幕 実績上げたのに不信感残った(2024年6月22日『読売新聞』-「社説」)
政府が提出した重要法案は順調に成立したが、「政治とカネ」の問題が尾を引き、政治不信を 払ふっ 拭しょく できなかった。政府も与野党も責任は重い。
経済安全保障の重要情報を扱う人に資格を与える適性評価制度の創設法案は、身辺調査を伴うため、一部に「プライバシー侵害だ」と批判する動きもあった。
重要法案が成立すれば内閣の実績となるはずだ。ところが、岸田内閣の支持率は低迷したままだ。政治資金問題の影響が大きな要因だったことは間違いないが、その問題への対処の拙劣さが不信を増幅させたのではないか。
政治資金規正法の改正案作りを巡っても、当初は自公の実務者に委ねていたが、突然、公明、維新との党首会談で両党の要求をほぼ丸のみして決着させた。
首相が実務者らの判断を超えた決断をすること自体は必要だが、自らの意を事前に説明せず、サプライズ効果を狙ったかのような手法をとったため、国会での法案処理に混乱を招くことになった。
首相が政権の危機を乗り越えるには、党と一体となって政治を安定させることが不可欠だ。
野党側も、次期衆院選を意識し、自民の政治資金問題への消極姿勢を印象づけることに終始した。
内外の課題は山積している。与野党は、閉会中審査を積極的に活用して議論を深めるべきだ。