現代の65歳代シニア世帯の平均貯蓄額・平均所得はいくら?(2024年9月22日『LIMO』)

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写真:LIMO [リーモ]
老後の貯蓄問題については、過去に「老後2000万円問題」が話題となりました。直近では、物価高を背景に「4000万円」と試算されることも。いきどころのない不安を感じてしまう方は少なくないでしょう。
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◆【グラフ】65歳代シニア世帯のお金事情(貯蓄額・所得額など)をチェック
なかには、ご自身の老後資金を心配するあまり、過度に質素な暮らしをしている方もいるかもしれません。
当記事では、高齢者世帯における平均貯蓄や収入と支出、いくら貯蓄があればゆとりを持って生活していけるのかを解説します。
※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
65歳以上のシニア世帯の平均貯蓄額
高齢者は若い人よりも貯蓄がありそうなイメージがありますが、具体的に、どのくらい老後資金を蓄えているのでしょうか。複数のデータを元に解説します。
総務省統計局のデータによると、世帯主が65歳以上で2人以上世帯の貯蓄現在高は平均2462万円となりました。
ただし、実際には裕福な世帯が平均を引き上げている可能性もあるため、中央値まで確認すると1604万円に留まります。
加えて、内閣府の調査では65歳以上の高齢者の貯蓄現在高の中央値は1677万円となりました。高齢者を除く世帯の中央値と比べるとおよそ1.4倍の数値であり、老後に備えている高齢者は多いようです。
いずれのデータにせよ、シニア世帯の老後資金の中央値は1600万円程度であることがわかります。
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●シニア世帯の老後資金の内訳
一言で「老後資金」といっても、預貯金や株式、生命保険などさまざまなアセット(資産の種類)に分類されます。アセットによって資産から得られる収入は変わってくるので、こちらも調査してみました。
65歳以上の高齢者の貯蓄内訳をチェックすると、やはりというべきか「定期預金」「預貯金」などの低リスク資産が大部分を占めていました。
金融広報中央委員会「「家計の金融行動に関する世論調査2023年」 (二人以上世帯調査) 」によると、金融商品を選択する際に「安全性」を重視する世帯が全体の約3割を占めています。
ただし、年々、収益性を重視する世帯割合が高くなっており、2023年調査時点では、安全性重視30.0%に対し、収益性重視35.1%と、収益性を重視してアセットを配分する世帯が5.1ポイントも多いことがわかりました。
「定期預金」「預貯金」が中心のシニア世帯においては、低金利の足元では老後資金からの金利収入はあまり見込めないと考えられます。
65歳以上のシニア世帯の平均所得
シニア世帯は貯蓄が多い反面、所得は低い傾向にあります。収入は不動産などを持っている方でない限り、基本的には公的年金のみに限られます。
 
高齢者における可処分所得、つまり所得から税金・社会保険料を差し引いた金額については、平均226万円になりました。貯蓄を考慮しなければ、毎月あたり19万円程度しか使えるお金がありません。
高齢者以外の世帯では、平均可処分所得がおよそ300万円あることを考えると、年金収入だけを頼りにして生きていくのは難しそうです。
65歳以上のシニア世帯は貯蓄と年金だけで生きていけるのか
シニア世帯における貯蓄額の中央値は約1600万円、年金などの所得平均は毎月19万円程度という結果になりました。
貯蓄と年金だけで生きていくことができるのか、シミュレーションしてみましょう。
老後必要とされる生活費
総務省の「家計調査年報」によると、毎月の家計支出は60~69歳においては29万円程度という結果になりました。75歳以上だと23万円ほどに留まっています。
加えて、生命保険文化センターが2022年度に実施した調査では、実際の高齢者が毎月必要だと考える支出額はおよそ23万2000円となりました。
データによって若干の差がありますが、少なめに見積もったとしても世帯あたり毎月23万円程度の支出は見込んでおいたほうがよいでしょう。
まとめにかえて
シニア世帯の貯蓄額の中央値である1600万円で老後を迎えるのはやや不安が残ります。
老後の支出は世帯によって異なりますが、平均はおよそ23万円程度です。加えて、老後の所得は平均19万円程度なので、平均だけを照らし合わせるのであれば毎月4万円は不足する計算になります。
さらに、男女の平均寿命は昭和22年からなんと30歳以上も伸びてきています。今後も寿命が横ばいになるとは考えにくいため、より多くの老後資金が必要になる可能性が高いです。
65歳から平均寿命まで生きる場合、毎月4万円不足すると仮定すると、男性で768万円、女性で1056万円ほど不足する計算です。特に、女性の場合は寿命が長いため、シニア世帯の貯蓄の中央値を上回ってしまっています。
老後といっても期間は想定以上に長いので、単純な貯蓄だけでなく、株式や債券などのリスク資産にもある程度は余剰資金を投じることで少しでも老後の暮らしが楽になるかもしれません。リスクをとって投資をするのは若者だけだという意見も、すでに常識とは言えなくなっている可能性があります。
参考資料
 ・総務省統計局「家計調査報告 貯蓄・負債編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
 ・内閣府「令和6年版 高齢社会白書
 ・金融広報中央委員会「「家計の金融行動に関する世論調査2023年」 (二人以上世帯調査) 」
 ・総務省統計局「家計調査報告家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
 ・生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」
 ・厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
北川 和哉