四国電力伊方原発3号機の使用済み核燃料プール=愛媛県伊方町で2013年11月19日午後3時3分、小松雄介撮影
矛盾から目を背けたまま原子力政策を進めても、国民の信頼は得られない。
9日には県、市、事業者が、貯蔵期間を最大50年などとする安全協定を締結する。だが、住民はさらなる長期化を懸念している。
ところが、中間貯蔵施設からの搬出先に想定されている青森県六ケ所村の再処理工場はトラブルが相次ぎ、完成が繰り返し延期されている。当初予定の1997年から30年近くたっても稼働の見通しはたっていない。
このため、原発から出る使用済み核燃料は、それぞれの敷地内のプールで保管されている。
敷地内で保管しきれなくなれば運転は続けられなくなる。そこで大手電力は一時搬出先として中間貯蔵施設の整備を急いでいる。
再処理工場が稼働し、使用済み核燃料を利用できるようになったとしても、その後に生じる「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)」の最終処分先は決まっていない。
核ごみ文献調査 手法の限界は明らかだ(2024年8月3日『北海道新聞』-「社説」)
調査主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は今秋にも報告書を完成させ、両町村長と鈴木直道知事に提出する。
だが概要調査に進むには首長と知事の同意が必要となる。両町村は住民投票などで是非を問う方針を示している。
鈴木知事は概要調査に反対する考えを繰り返し示してきた。核のごみの道内への持ち込みを「受け入れ難い」と宣言した2000年制定の「核抜き条例」に沿うもので当然の対応だ。
報告書案にも知事の考えは盛り込まれた。NUMOをはじめ国側は重く受け止めるべきだ。
何としても選定手続きを継続したい国側の姿勢が透ける。
こうした進め方では、最終処分場の最適地を科学的、客観的に選定することはできない。
委員会では「調査自体が地域の人間関係に影響を信濃毎日新聞与える」との指摘も出た。住民が分断された現実を国は直視すべきだ。
核燃の中間貯蔵 「50年」の約束守れるのか(2024年8月3日『信濃毎日新聞』-「社説」)
原発の再稼働を進めるための、場当たりなごまかしでしかない。
一時的な保管と言い繕って、事実上の最終処分場が地方に押しつけられないか心配だ。
原発で一度使い終えた核燃料を再処理するまで保管する施設だ。東京電力と日本原子力発電が共同で出資した事業者が運営する。協定は、貯蔵を最長で50年間と明記し、期限までに運び出すことを事業者が約束するという。
けれど、国内での再処理はいまだ実現せず、確実に運び出される保証はない。そもそも、期限が50年も先の約束に誰がどう責任を負うのか。国策にもかかわらず協定に政府が加わらないことも、責任逃れとしか受け取れない。
政府は「核燃料サイクル」を原子力政策の柱と位置づけてきた。再処理によってプルトニウムやウランを取り出し、再び利用する構想だ。しかし、要である再処理工場は完成が繰り返し延期され、当初の予定から20年余を経て、稼働する見通しが立たない。
再処理した燃料を使う高速増殖炉の計画はかつて、燃やした以上のプルトニウムを生む夢の原子炉と喧伝(けんでん)されながら、開発段階の原型炉でトラブルが続き、頓挫した。原発で再び使うプルサーマル発電は苦し紛れの代替策にすぎず、思うように進んでいない。