河野太郎氏、電力は「原発再稼働しても足りない」 〝脱原発〟を封印 支持拡大狙う(2024年7月31日『産経新聞』)

キャプチャ
量子科学技術研究開発機構の那珂フュージョン科学技術研究所を視察する河野太郎デジタル相=31日、茨城県那珂市(末崎慎太郎撮影)
 
河野太郎デジタル相は31日、日本原子力発電東海第2原発茨城県東海村)などを視察し、安全性が確認された原発再稼働を当面容認する考えを改めて示した。視察終了後、記者団に「原子力規制委員会が安全を確認したものは再稼働している。それに加えて核融合や水素などを前広に考えていかなければいけない」と述べた。「脱原発」を持論とする河野氏は、9月の自民党総裁選出馬を模索しており、支持拡大を図りたい思惑が透ける。ただ、河野氏は将来的な原発ゼロを否定しておらず、党内の原発推進派の警戒感は強い。
〝変節〟問われ「違います!」
河野氏はこの日、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(同県大洗町)なども視察。生成AI(人工知能)の利用拡大などでデータセンターの消費電力が増えている現状から「再生可能エネルギーだけでは2050年のカーボンニュートラル温室効果ガス排出実質ゼロ)を見据えると間に合わない」との認識を示した。「(原発を)再稼働しても足りない可能性がある」とも語った。
キャプチャ2
原子力政策は、総裁選で争点の一つとなりうるが、河野氏にとっては「鬼門」ともいえるテーマだ。
河野氏東京電力福島第1原発事故を踏まえ、平成24年に超党派議員連盟原発ゼロの会」を設立するなど党内きっての脱原発派と目されてきたが、令和3年の前回総裁選で「安全が確認された原発を当面は再稼働していく」と表明。この際も原発推進派に支持を広げる狙いがあった。総裁選期間中に出演したテレビ番組では、たびたび原子力政策の〝変節〟を問われ、「違います!」と声を荒らげたこともあった。
容認の裏に麻生氏の意向
河野氏は、原発再稼働容認を表明する一方、使用済み核燃料を再処理して繰り返し使う「核燃料サイクル」を止めるとの主張は変えなかった。サイクルを止めれば使用済み核燃料が行き場を失い、全国の原発にある貯蔵プールがあふれるため再稼働は難しくなる。
他の総裁選候補や党内からは「動いている原発も動かすのが難しくなる」との指摘が相次ぎ、河野氏が失速する要因の一つとなった。今回の視察では、「使用済み核燃料をどう処理するのかという一番、肝心なところが見えていない」と述べるにとどめた。
再び〝変節〟と批判される可能性がある中で、河野氏が改めて原発再稼働容認などに言及したのは、所属する麻生派志公会)会長の麻生太郎副総裁の意向があったからだ。派内には「脱原発を主張している以上、河野氏は推せない」(派閥関係者)との声がある。別の派閥関係者によると、麻生氏が「脱原発の主張を降ろして、きちんと外にも説明しろ」と河野氏に直接指示したという。
ただ、今回の河野氏の発言は、これまでの域を出ず、中途半端との批判も出る可能性はある。
河野氏は9月の総裁選出馬に向けて「まずは麻生派を固めることに注力する」(河野氏周辺)戦略だ。党内唯一の派閥となった麻生派の約50人から支援が得られれば、河野氏にとっては大きな武器になる。ただ、河野氏への支援には反発もあり、支持が広がるかは見通せない状況だ。(大島悠亮、末崎慎太郎)