審判団、「誤り」認めるも判定覆らず 銅メダルの柔道・永山「悔しい」(2024年7月28日『毎日新聞』)

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柔道男子60キロ級準々決勝、スペインのガリゴス・フランシスコ(奥)に一本負けし、天を仰ぐ永山竜樹=シャンドマルス・アリーナで2024年7月27日、平川義之撮影
 
 パリ・オリンピック第2日は27日、柔道男子60キロ級が行われ、初出場の永山竜樹選手(28)=SBC湘南美容クリニック=が準々決勝でフランシスコ・ガリゴス選手(スペイン)に一本負けした。永山選手は敗者復活戦から勝ち上がって銅メダルを獲得したが、準々決勝の判定に「誤り」があったことも明らかになり、後味の悪さを残した。
 準々決勝の判定が「誤審なのでは」と物議をかもしたのはガリゴス選手が審判の「待て」の後も寝技を解かず、片手絞めをし続けたように見えたからだ。
 永山選手は試合後半、寝技に引き込まれ、ガリゴス選手に片手絞めを許した。それでも何とかこらえて、残り時間約1分で審判から「待て」がかかった。その数秒後、ガリゴス選手の一本勝ちが宣告された。金野潤強化委員長や鈴木桂治・男子監督ら全日本柔道連盟側は試合後に審判団に抗議したが、永山選手が「失神」したとみなしたという。
 全柔連側によると、ガリゴス選手は「待て」の後に6秒間絞め続けていた。永山選手は「(首が)絞まっているところに指を入れていたが、(『待て』と聞こえて)力を抜いたときにしっかり入ってしまった」と、「落ちた」場面を振り返った。判定を聞いた時は「正直何が起きたか分かっていなかった」と語る。
 鈴木監督によると、審判団は「待て」が誤りだったことを認めたが、判定自体は覆ることはなく、ガリゴス選手がなぜ絞め続けたかについての明確な説明はなかったという。鈴木監督は「『待て』と言われても絞め続けることが柔道精神にのっとるのか。『待て』は神の言葉にも悪魔の言葉にもなる。絞めて落ちたからルール通り(負け)だというのは違うのではないか」と語気を強めた。
 「すまん、俺たちの力不足だ。(敗者復活戦から)勝つことで強さを証明してくれ」。永山は鈴木監督らに声を掛けられ、銅メダルを獲得した。永山選手は時折声を詰まらせながら、「やっぱり金メダルを目指してきたので悔しい」と複雑な表情を浮かべた。【岩壁峻】

【柔道】永山竜樹〝誤審敗退〟の波紋 暴走王・小川直也氏が見解「抗議する気持ちもわかる。ただ…」(2024年7月28日『東スポWEB』)
 
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準々決勝で判定に抗議する永山竜樹(中)
 パリ五輪の柔道競技が27日にスタート。初日は女子48キロ級の角田夏実(31=SBC湘南美容クリニック)が金メダル、男子60キロ級の永山竜樹(28=同)は銅メダルを獲得した一方で、審判の判定が物議を醸した。
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永山の判定を巡って、競技委員に掛け合った鈴木桂治監督(左奥)
 特に永山は準々決勝で、不可解すぎる判定に涙をのんだ。寝技でガリゴスに片手絞めを決められたが、主審は「待て」のコール。だが、ガリゴスは技を解かず絞め続けると、永山は意識を失って「落ちた」状態になり、これを見た主審はガリゴスの一本勝ちを宣告した。SNS上ではこれに「待てがかかっているのに、なぜ一本負け」「世紀の大誤審」などの声が上がり、「X」では「柔道の審判」がトレンド入りしたほどだった。
 バルセロナ五輪95キロ超級銀メダルの〝元暴走王〟小川直也氏は「みんな怒っているのは、『待て』がかかっているのに、絞め続けて落としたから。それは理解できるし、俺も確かに腑に落ちない。永山選手の抗議する気持ちもわかる。ただ、今のジュリー(審判委員)はチームで動いているし、あれが今回の五輪までのルールの中で出した答えなんだろうなとは思う」と見解を述べた。
 その上で「厳しい言い方、酷な言い方になっちゃうけど」と前置きした上で「『待て』がかかって、油断しちゃった面はある。俺らの(現役の)頃は、『待て』がかかっても何が起こるかわからないから気を緩めるな、とずっと教えられてきた。審判だって信用するなって。『五輪には魔物が潜んでいる』というしね。今もそう指導されているんじゃないのかな」と指摘する。
 さらに「絞め技は落ちてしまったらダメだよな。永山選手も落とされたのは事実だし、試合の展開でも何度も、あの体勢にもっていかれた。寝技のシーンはあれが初めてではないんだよね」と、主審の判定は試合の流れに左右された面もあるという。
 五輪は、競技人口の減少が止まらない柔道が世間に大きくアピールできる大舞台。それだけに、小川氏は「(審判から)説明がほしいわな。ただ、(不可解判定は)柔道ではありがちな話。あっちゃいけないことなんだけど。角田選手が金メダル取って明るい話題があるのに、こうしたことで『柔道の審判』が注目されるのは非常に残念」と締めくくった。

柔道・永山竜樹に不可解判定で勝利のガルリゴスに厳しい批判、地元スペイン紙「日本から批判を受けた」と報じる(2024年7月28日『中日スポーツ』)
 
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柔道男子60キロ級の表彰式、右端がガルリゴス、右から2番目が永山(AP)
◇27日 パリ五輪 柔道男子60キロ級
 永山竜樹(SBC湘南美容クリニック)との準々決勝で審判員から「待て」がかかった後も数秒間、絞め続けた疑惑が出ているフラン・ガルリゴス(スペイン)について、スペイン紙「アス」が「日本から批判を受ける」との見出しで報じた。
 
 同紙電子版は27日、「ソーシャルメディア上で批判されている」と報道。「準々決勝で永山竜樹を破った後、日本から批判を受けた」とし、ガルリゴスのコーチが「彼は嫌なメッセージを受け取っている。私は彼らが正しいとは思わないし、フランを守るつもりだ。彼がしたことは不名誉なことだと言われているが理解できない」などとスペインメディアに語ったことを紹介した。ガルリゴスのインスタグラムには日本語で「柔道を汚すな。スポーツを汚すな。」「反則で勝って嬉しいの?」「スペイン人が嫌いになった」などの批判が多く寄せられ、英語でも「恥を知れ」などのコメントが寄せられている。
 締められた永山が失神したことで一本勝ちしたガルリゴスは準決勝で敗れるも、3位決定戦で勝ち、敗者復活から勝ち上がった永山と同じく銅メダルを獲得した。(写真はAP)

「審判は絶対だ」柔道で不可解判定 握手を拒否されたスペイン選手側は持論「何の文句を言っているのかわからない」【パリ五輪】(2024年7月28日『CoCoKARAnext』)
 
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永山からの握手を拒絶されるガリゴス。(C)Getty Images
 日本で波紋を呼んでいる判定に、相手側は「正当性」を訴えている。
 物議を醸したのは、現地時間7月27日に行われたパリ五輪の柔道男子60キロ級の準々決勝でのワンシーン。試合は日本の永山竜樹(世界ランキング6位)がスペインのフランシスコ・ガリゴス(同4位)に一本負けを喫したのだが、その決着が不可解な判定によるものだった。
 開始間もなくしてガリゴスの寝技を受けた永山は、しっかりと足を絡めて防いでいた。しかし、主審の「待て」の合図を受けた後に力を抜く。だが、ガリゴスは力を緩めずに「隙あり」とばかりに一気に締め上げた。
 待ての合図からわずか6秒。咄嗟の出来事だったが、ここで永山は瞬間的に失神。これを見た主審は一本を宣言した。
 敗れたと思っていない永山は、憮然とした表情を浮かべると、両手を広げて抗議。ガリゴスの握手も拒否し、徹底抗戦の構えを見せる。スペインの応援団からブーイングを浴びながら約3分間も粘った。
 それでも結局、判定は覆らず。五輪初挑戦となった28歳は不服そうな顔を浮かべながらも畳を降りていった。
 もっとも、平然と握手を求めたガリゴス側は勝利を信じて疑わない。母国の公共放送『RTVE』のスポーツチャンネル「teledeporte」のインタビューに応じた勝者は「彼(永山)は結果には納得していないように見えたよ。文句を言うのは自由だけど、審判の決定は絶対だからね」と強調。握手を拒否されたことには、「彼は怒っていた。もちろん金メダルを獲りたいと思っていただろうから」と永山の気持ちを慮るように語った。
 また、ガリゴスのコーチであるキノ・ルイス氏は、スペイン紙『Marca』で「フランは日本人に対してとても冷静だった」と称賛。そして物議を醸したシーンについては、率直な感想を口にしている。
「絞め技で意識を失った場合、自動的に一本となる。彼らが何の文句を言っているのかわからない。非常にフィジカルな戦いだったが、フランは非常に危険な選手だ。彼は日本人に攻撃の選択肢を残さないように、先回りしてプレーするように上手く振舞っていた」
 五輪の大舞台で起きた不可解なジャッジに泣いた。それでも永山は直後に行われた敗者復活戦を勝ち抜け、3位決定戦でも勝利。見事に銅メダルを獲得している。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]