巨額の寄付金が示す熱狂 ハリス支持へハリウッドスター結集で起きること(2024年7月27日『東洋経済オンライン』)

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バイデン大統領の支持を受け、民主党の次期大統領候補となることがほぼ確実となったカマラ・ハリス氏(右から2番目)(写真:ERIC LEE/The NeW York Times
 ハリウッドが、喜びに沸いている。『デッドプールウルヴァリン』や『インサイド・ヘッド2』のおかげで映画館に人が戻ってきたからではない。もちろんそれも嬉しいが、民主党の次期大統領候補がカマラ・ハリスでほぼ確実となり、一気にムードが盛り上がってきたからだ。
バイデン大統領と談笑するジョージ・クルーニー。当初はバイデンの寄付金集めに協力していたが、撤退を求めた
 圧倒的に民主党支持者が多いハリウッドには、先月下旬のトランプとバイデンのテレビ討論会以来、暗いムードが立ち込めていた。バイデンの再選を望んできた人々も、明らかに歳を取った彼の姿を目の当たりにして「これではトランプに勝てない」と、頭を抱えたのだ。
 そこで支持者の間から出てきたのが、バイデンに撤退してもらい、新たな候補を立てるべきだという主張。その直前までバイデンに寄付をしてきたドラマ『LOST』のクリエイター、デイモン・リンデロフは、状況を野球の試合に例え、「リリーフ投手に変わるまで寄付を止めよう」と呼びかけた。
ジョージ・クルーニーも新候補を望んでいた
 長年のバイデン支持者である映画監督ロブ・ライナー(『スタンド・バイ・ミー』『恋人たちの予感』)も、「トランプが勝って民主主義が失われることを避けるために」と、撤退を呼びかけた。
 中でも、ジョージ・クルーニーが「I Love Joe Biden. But We Need a New Nominee(私はジョー・バイデンが大好きだ。だが、私たちには新たな候補者が必要)」という見出しの意見記事を「The New York Times」に寄稿したことは、大きな注目を集めた。しかし、続投への意志を曲げないバイデンを支持し続ける人、あるいは気遣って本音を言えない人も多く、意見にまとまりがなかった。
 そんなところへ、トランプの暗殺未遂事件が起きたのだ。この恐ろしい出来事を受けて、共和党は団結。「トランプは“選ばれし者”だから助かったのだ」と神格化するような声まで一部の支持者から出たところへ、さらに39歳のJ・D・バンスが副大統領候補に指名されると、キャンペーンは大きく勢いづいた。何もできずに手をこまねいているだけの民主党との差は広がるばかりだ。
 と思っていたら、現地時間21日、バイデンが撤退を宣言し、ハリスへの支持を表明したのである。民主党の大物や、熱烈な支持者ですら予想しなかったバイデンのその行動は、すべてを変えた。
 ハリスは、2020年の大統領選に出馬し、バイデンをはじめとする多くの民主党候補者と争ったとき、早々と撤退を強いられている。バイデンの副大統領候補に指名され、史上初の有色人種女性の副大統領が誕生したときこそアメリカは興奮したものの、就任後の評価は決して高いとは言えなかった。
■候補がハリスに決まった納得の理由
 バイデンの撤退宣言前には、彼が撤退を決めてくれた場合、そのままハリスを候補者にスライドさせるのが妥当なのか、ほかの有力な候補と争わせるべきなのかという議論もしばしば聞かれた。
 クルーニーは、「The New York Times」の意見記事で、ハリスのほか、カリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサム、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーなど複数の名前を挙げたうえ、それらの人々に討論をしてもらって決めることを提案していた。いずれにせよ、「絶対にハリスにするべきだ、彼女なら勝てる」という雰囲気ではなかった。
 だが、バイデンがハリスを指名したことで、突然にして答えが出たのだ。そして、民主党支持者は、驚きながらもそこに飛びついた。考えてみれば、いろいろと意味をなすからである。
 クルーニーが言うように、若くて優れた民主党の政治家はほかにもいる。しかし、その人たちを争わせると、その間、党の統一は取れない。
 また、ハリスはバイデンと3年半コンビを組んできた人だ。バイデンの政策の継続を望むのであれば彼女に引き継いでもらうのは自然なこと。これまでバイデンが集めてきた寄付金は、バイデン/ハリス政権の続投のためだったわけなので、そのままハリスに使ってもらうことができる。
 何より、トランプとハリスの顔を並べてみればいい。むっつり顔の78歳の白人男と、豪快な笑いがトレードマークの黒人とアジア系が混じった59歳の女性。どちらが好印象なのかは、明白だ。
 バイデンの宣言後すぐ、ソーシャルメディアには、マーク・ハミルスパイク・リージョン・レジェンドジェイミー・リー・カーティスアリッサ・ミラノなど、セレブによる喜びの声が寄せられた。
■史上最高の寄付金
 その中には、アリアナ・グランデケイティ・ペリーなど、若いファンを持つ人も含まれる。ビヨンセも、ハリスの集会に自分の曲の使用を許可する形で支持を表明。彼らよりやや遅れたが、クルーニーも、2日後にハリスを支持する声明を出している。
 寄付金もたちまち集まった。最初の24時間で8100万ドルを集めたのは、史上最高記録。選挙キャンペーンに寄付するのは初めてという人が多くいたことも、興奮の高さを示す。
 Netflixの創業者リード・ヘイスティングスは、ただちに700万ドルを寄付した。ビリオネアの彼にとっても、個人の候補者にここまでの金額を贈るのは初めてだという。
 これから選挙までの約3カ月、ハリスはハリウッドからの愛を感じ続けることだろう。そもそも、彼女は以前からハリウッドとつながりがあるのだ。
 2016年に上院議員に立候補した時には、J・J・エイブラムスジェイミー・フォックスアーロン・ソーキンらが彼女を支持したし、ディズニー・エンターテインメントの共同会長で、同い歳の女性ダナ・ウォルデンとは、30年来の友人。
 ハリスがエンターテインメント弁護士の夫ダグ・エムホフと知り合ったのも、映画監督レジナルド・ハドリン(『ブーメラン』『マーシャル 法廷を変えた男』)夫妻の紹介だった(ハドリン夫妻とは、ウォールデンの紹介で友達になった)。
 オフィスにいない時、ハリスとエムホフは、ロサンゼルスの高級住宅街であるブレントウッドに住んでいる。つまり、多くのセレブとご近所さんでもある。
 先月中旬、クルーニージュリア・ロバーツ、ジミー・キンメル、オバマ元大統領は、ロサンゼルスで行われたバイデンのための寄付金集めイベントを主催したが、ハリスのためにもトップレベルのスターがきっと集まってくれることだろう。
■ヒラリーはスターの支持を受けても敗れたが…
 とはいえ、ハリウッドからの熱烈支持は決して勝利を約束するものではない。2016年、ヒラリー・クリントンがそれを証明している。彼女はその年に初めて選挙権を得たクロエ・グレース・モレッツなど若者からMCUのスターまでありとあらゆるセレブの支持を得て、事前の調査では優勢だと言われていたにもかかわらず、トランプに負けた。
 また、2004年にクルーニーの父ニック・クルーニー民主党から下院議員に立候補した時も、共和党のライバルに「これはハリウッドとハートランドの戦いだ」と強調され、負けてしまっている。
 お金と名声があるスターたちにつべこべ言われるのを嫌う人たちは一定数いるということ。だが、耳を傾けてくれる人の多いセレブが味方してくれるのは、もちろんプラスだ。11月の勝利に向け、ハリスはそのうまいバランスを見つけていけるだろうか。
猿渡 由紀 :L.A.在住映画ジャーナリスト

家族に何が? トランプが、笑顔で近づく娘を「徹底無視」した瞬間を撮影…妻メラニアからは「キス拒否」される(2024年7月27日『ニューズウィーク日本版』)
 
<妻メラニアにキスしようとして「避けられた」トランプだが、今度は自分にキスしようとした娘ティファニーを無視した様子が撮影された>
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トランプと娘のティファニー(2016年) Gary Cameron-Reuters
 
ドナルド・トランプ米大統領共和党全国大会で、娘であるティファニー・トランプの挨拶を「無視」した様子を捉えたとされる動画が、ネット上で拡散されている。トランプは、自分に笑顔で近付きキスしようとする娘に気付きながらも、なぜかすぐに顔を背けて完全に無視。親子の不思議な関係を示すこのシーンはSNSで注目を集めている。
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トランプはウィスコンシン州ミルウォーキーで開催された共和党全国大会の最終日である7月18日、2024年米大統領選に向けた同党大統領候補の指名受諾演説を行った。約93分という米近代史上で最も長い指名受諾演説だった。
彼は演説の中でジョー・バイデン米大統領を「米史上最悪の大統領」と述べ、さらにこう続けた。「アメリカの未来はこれまで以上に大きく、より良く、力強く、明るく、幸福で、より自由で偉大で団結したものになるだろう。平たく言えば、われわれは非常に素早く、アメリカを再び偉大にするだろう」
だがソーシャルメディア上で注目を集めているのは、同大会で起きたほんの一瞬の出来事。トランプと娘ティファニーのやり取り(というかその欠如)を捉えた瞬間だ。
■娘の顔を一瞬見てすぐに顔を背けるトランプ
X(旧ツイッター)に投稿された問題の動画には、党大会に出席したティファニーが席に着くために会場の階段を上りながら、父トランプに笑いかける様子が映っている。トランプは一瞬ティファニーに目を向けたように見えるが、すぐに顔をそむけている。ティファニーはトランプの胸に手を置いて頬にキスをしようとしたものの、キスは「空振り」に終わった。
ティファニーは、そうした父の振る舞いに特に反応することなく、きびすを返して自分の席に向かった。後ろには彼女の夫のマイケル・ボウロスがいたが、トランプは彼にも挨拶をしていないように見える。
ティファニーは、トランプと彼の2番目の妻(1993年~1999年)マーラ・メイプルズとの間に生まれた唯一の娘だ。トランプにはほかにも最初の妻である故イバナ・トランプとの間にドナルド・トランプ・ジュニア(46)、イバンカ・トランプ(42)、エリック・トランプ(40)の3人の子どもがおり、さらに現在の妻メラニア・トランプとの間に息子バロン・トランプ(18)がいる。
■メラニアが夫のキスを「かわした」瞬間も話題に
ラニアは近年、公の場にほとんど姿を見せていなかったが、18日の共和党全国大会には出席。夫トランプがキスしようとしたのを「よけた」とされる瞬間がソーシャルメディア上で大きな話題を呼んだ。
これはトランプが指名受諾演説を行った後の出来事だった。トランプは演説の中で、13日にペンシルベニア州で開かれた集会で銃撃を受け、耳に怪我を負ったことを話した。
そして演説が終わると妻の方に体を向けて唇にキスをしようとしたが、メラニアがこれを「かわした」ように見えたと、米政府系ラジオ「ボイス・オブ・アメリカVOA)」の元ホワイトハウス支局長であるスティーブ・ハーマンはソーシャルメディアプラットフォーム「マストドン」に書き込んだ。
ラニアはトランプがキスをしようとした際に顔をそらして頬を向け、その後はトランプと手をつないでステージを降りた。
ライアン・スミス