バイデン氏出馬断念からハリス氏に一本化、なぜこんなに早くできた? 「若い・黒人・女性」で支持拡大を狙う(2024年7月25日『東京新聞』)

 
 アメリカ大統領選で、バイデン大統領の推薦を受け、民主党候補の指名を確実にしたばかりのハリス副大統領が23日、トランプ前大統領との対決に向け選挙運動を始めた。バイデン氏の進退問題で大きく揺れた党内が短期間のうちにハリス氏の一本化でまとまった背景には、これ以上の混乱を避け、選挙戦に集中すべきだとの危機感があったとみられる。

◆100人以上に直電、クリントン夫妻が呼応し流れ

 米メディアによると、ハリス氏はバイデン氏が21日に出馬断念を表明し、自身を後継候補に推薦した直後から、党の有力者ら100人以上に電話で支持を呼びかけた。クリントン元大統領夫妻らが早々に支持を表明し、指名に向けた流れを整えた。
 8月19日開幕の党大会まで1カ月を切る中、予備選を再び行う時間的な余裕はなく、バイデン陣営が集めた選挙資金を「ランニングメート(伴走者)」のハリス氏なら引き継ぐことができる点も追い風となった。
ハリス副大統領㊧とトランプ前大統領(資料写真)

ハリス副大統領㊧とトランプ前大統領(資料写真)

 「バイデン降ろし」に加わった連邦議会議員には、自身の選挙へのマイナス影響を懸念する声が強く、59歳で黒人女性のハリス氏が候補になれば、若年層や女性、非白人の支持が拡大するとの期待感も広がった。
 また、党内のホープで候補に名前が挙がっていた西部カリフォルニア州のニューサム、中西部ミシガン州のウィットマー、東部ペンシルベニア州のシャピロの3知事もそろってハリス氏を支持し、出馬を見送った。選挙戦の準備期間の短さや結束を重視する党内の反応を考慮したとみられる。
 一方、党議会トップを務める上院のシューマー院内総務と下院のジェフリーズ院内総務の支持表明は、候補指名の大勢が決した翌日の23日にずれ込んだ。シューマー氏は23日の会見で、「事前にハリス氏からトップダウンではなく、多くの党員の支持を得て指名を勝ち取りたいと伝えられていた」と説明。
 ハリス陣営や党指導部には、一本化までのプロセスを巡って、不透明さや性急さに対する批判が噴出することを回避したい思惑もあったとみられる。(ワシントン・鈴木龍司)
   ◇

◆元州司法長官のハリス氏「私は犯罪者を知っている。だからトランプ氏も知ってる」

 【ワシントン=浅井俊典】11月のアメリカ大統領選で、民主党のハリス副大統領(59)が23日、党の候補指名を確実にして初めてとなる選挙集会を中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開いた。ハリス氏は「11月は自由か混沌(こんとん)かを選ぶ選挙になる。勝利できるよう、党を結束させることを誓う」と訴え、共和党のトランプ前大統領(78)への対決姿勢を鮮明にした。
「私はあらゆる類いの犯罪者を取り締まってきた。だから、トランプ氏がどんな人物かを知っている」と対決姿勢を露わにしたハリス氏のX(旧Twitter)

「私はあらゆる類いの犯罪者を取り締まってきた。だから、トランプ氏がどんな人物かを知っている」と対決姿勢を露わにしたハリス氏のX(旧Twitter

 ハリス氏は、検察官やカリフォルニア州司法長官を務めた経験を踏まえ「私はあらゆる類いの犯罪者を取り締まってきた。だから、トランプ氏がどんな人物かを知っている」と議会襲撃事件などで起訴されたトランプ氏を批判。
 「トランプ氏は米国を後退させようとしている」と主張し、「私たちは後戻りしない。未来のために戦う」と支持を呼びかけた。また、バイデン大統領(81)が掲げた中間層重視の政策を進めると約束した。
 ロイター通信がバイデン氏の撤退表明後の22、23両日に実施した世論調査の平均支持率は、ハリス氏が44%、トランプ氏が42%でほぼ拮抗(きっこう)、激戦州の動向が勝敗の鍵を握るとみられる。
 バイデン氏は23日、X(旧ツイッター)への投稿で、24日夜(日本時間25日午前)からホワイトハウスの大統領執務室で国民に向けて演説すると発表した。撤退の理由を説明する予定で「今後の展望と、米国民のために私がどのように仕事を終わらせるかについて語る」とつづった。
 バイデン氏は新型コロナウイルスに感染して自主隔離を続けていたが、23日に症状がなくなったことが確認され、ホワイトハウスに戻った。