被災者と語り、家財を運ぶ 金沢大ボランティアサークル、「ありがとう」を原動力に活動中(2024年7月25日『東京新聞』)

 
 能登半島地震の被災地で積極的に活動している金沢大の学生サークル「ボランティアさぽーとステーション」。被災地での活動は2月22日に始まり、石川県の七尾、輪島、能登珠洲市町への訪問は24回になった。学生にとって被災した人々と語り、家財を片付けることは貴重な体験。生き方を考える道しるべになっている。(沢井秀和)
活動の打ち合わせする学生たち。右から、稲葉勇希さん、福岡碧衣さん、成田光我さん、西村省吾さん。左端は、顧問の原田魁成・人間社会研究域講師=金沢市の金沢大で

活動の打ち合わせする学生たち。右から、稲葉勇希さん、福岡碧衣さん、成田光我さん、西村省吾さん。左端は、顧問の原田魁成・人間社会研究域講師=金沢市の金沢大で

◆現場で役に立っている実感

 「雨が降れば、壊れた家屋に雨が入り、家財や写真などの大切なものがだめになる。自分たちが動くのが重要」「半日かけて家から木材を運んでいる夫婦がおられた。学生3人なら、その後の作業を40分程度で終えられた。『助かったあー』と言ってもらえた」
 学生の口から出てくるのは、自分たちが現場で役に立っている実感だ。
 「大変な苦労をされている方が『ありがとう』『頑張って』と言ってくださり、活力になっている」
 サークル代表で、地球社会基盤学類2年の西村省吾さん(19)は、自ら10回余りボランティアをした原動力をそう明かす。住民たちと会話するちょっとした時間を大切にしている。道路が被害を受けた現状を目の当たりにして「災害に強い交通インフラ、まちづくりを学び、この分野で貢献できる仕事に就けたら」との思いを強めている。

◆まちづくり、重機の開発、医療の道へ

 活動経験を進路に具体化に生かそうとしているのが大学院修士課程2年の成田光我(こうが)さん(24)だ。重機・建設機械メーカーに就職した上で、遠隔操作できる重機の実用化にかかわれることを思い描く。「学部時代に能登地方を訪れ、人々の優しさに触れた。もっともっと力になりたい」
被災した家屋から畳を運び出す学生たち=5月18日、石川県輪島市で(ボランティアさぽーとステーション提供)

被災した家屋から畳を運び出す学生たち=5月18日、石川県輪島市で(ボランティアさぽーとステーション提供)

 機械工学を学ぶ3年の稲葉勇希(ゆうき)さん(22)は「力がない人でも、3階にあるものを運べるようなパワースーツをはじめ、孤立集落に物資を運搬したり、被害状況を把握したりするドローンの開発にかかわりたい」と、将来の道を語る。
 きめ細かな作業を手伝っているのは保健学類2年の福岡碧衣(あおい)さん(19)だ。「力仕事でなく、茶わんや小物類の分別とか、重機ができないことをやっている」。検査技術科学専攻で学んでおり「心に傷を負った人とのコミュニケーションの大切さを知った。検査技師として病院に勤務する際に生かしたい」と話す。

地震前の15人から所属学生は76人に

 地震前は15人だった所属学生は計76人に。今春、防災・ボランティア意識の高い新入生が多く加わった。
 学生が活動する際は、能登地方の各市町に設けられているボランティアセンターに連絡し、活動候補日を決めて参加者を募る。ボランティア保険に入り、マスク、ゴーグル、ヘルメット、安全靴などを着用。熱中症対策、毒虫や毒ヘビ対策の備品も携帯している。車は大学への寄付金などを使ってバス会社に委託運行してもらっている。