最低賃金の全国平均は、現在の時給1004円から1054円に5.0%引き上げられる。歴史的な物価高や、今年の春闘で大幅賃上げが実現したことを踏まえて引き上げ幅、引き上げ率ともに過去最大。新たに北海道や静岡県など8道県で最低賃金が1000円台に達し、大台超えは16都道府県に増える。
目安額は経済情勢に応じ、各都道府県をA~Cの3ランクに分けて提示されるが、今回は3ランクすべてで同じ50円だった。前年度は東京や大阪など6都府県のA地域の引き上げ幅が、宮城や兵庫など28道府県のB地域、青森や沖縄など13県のC地域を上回っていた。
ただ、前年度は人口減少に直面する地方を中心に働き手を隣県に奪われたくないとの危機感が広がり、24県の審議会が中央審議会の示した目安額を上回る引き上げを決めた。今年度の改定協議でも、労働者側の委員は最低賃金の低い地方から都市部に人口が流出していると指摘。特にB、C地域の大幅な引き上げを求めた。
こうした事情が地方の賃金水準を底上げすることにつながったとみられるが、現在最も高い東京(1113円)と最も低い岩手(893円)の差は、目安通りに決まれば220円のまま縮まらない。
引き上げ率は、連合が集計した今春闘の平均賃上げ率5.1%に迫る高水準。労働者側の委員が前年度を超える引き上げを求めたのに対し、経営者側は中小零細企業の支払い能力を考慮して大幅引き上げに慎重だったが、最終的に受け入れた。
2024年度の最低賃金(時給)について、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は24日、50円(5%)引き上げるとする目安を決めた。各都道府県が目安額通りに引き上げると、全国加重平均の時給は1054円となり、現在の1004円を大きく上回る。
最低賃金は、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の下限額。①賃金②労働者の生計費③使用者の賃金支払い能力の3要素を考慮し、労使の代表と有識者からなる厚労省の審議会が目安額を決定。これをもとに、各都道府県の地方審議会がそれぞれ上げ幅を定め、例年10月以降に適用する。
目安額は都道府県を3ランクに分けて決定する。今年度はAランク(東京、大阪など6都府県)、Bランク(北海道、福岡など28道府県)、Cランク(岩手、沖縄など13県)の目安額はいずれも50円。B、Cランクの地域で雇用情勢が良かったためで、同額となるのは異例だ。目安通りに改定されれば、最も高い東京都の最低賃金は1113円から1163円となる。全国で最も低い岩手県は893円から943円となり、全都道府県で900円を超える。
今年の春闘では大企業を中心とした賃上げ率が5%台に達し、33年ぶりの高水準に。労働者代表の連合は「歴史的な賃上げの流れを社会全体に広げる必要がある」として67円の引き上げを求めていた。
一方、中小・小規模事業者の賃金上昇率は2・3%と小幅で、使用者代表の日本商工会議所などは「賃上げは重要だが、小規模な企業ほど価格転嫁が進まず、企業規模による格差が生じている」と主張し、大幅な引き上げには慎重な姿勢を示していた。
過去最高の上げ幅となったが、各国の最低賃金の水準は日本より高い。全労連の23年12月時点のまとめによると、英国2102円▽ドイツ1976円▽フランス1834円▽韓国1103円。米国は連邦最低賃金のほかに、独自に設定する州や市があり、ワシントン州では2346円となっている。
政府は30年代半ばに全国加重平均を1500円に引き上げる目標を掲げ、さらなる前倒しを目指している。35年度に1500円とする場合、毎年度で平均3・4%の引き上げが必要となるが、今年度は5%と大きく上回った。【奥山はるな、塩田彩】