中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は、令和6年度の最低賃金の全国平均時給を1004円から50円上げ、1054円とすることで決着する見通しとなった。関係者が24日明らかにした。実現すれば上げ幅は5年度の43円を上回り過去最大で、時給も最高額となる。物価高騰や賃上げが相次いだ今春闘を反映させることを目指していた。
最低賃金は47都道府県それぞれで設定する。目安額は、経済情勢に応じて都道府県をA―Cの3区分に分けた上で区分ごとに示す。現在、最も高いのは東京都の1113円で、最低は岩手県の893円。両都県の差は220円あり、地域間格差の縮小につながるかどうかも注目されていた。
6月に始まった協議で、労働者側の委員は長引く物価高の中で高まる賃上げ機運を背景に、大幅な引き上げを主張。東京などを除くB、C区分の計41道府県で、現行額から67円引き上げるよう求めた。
最低賃金の改定目安として、政府の審議会が過去最大の上げ幅を提示した。物価上昇に賃金上昇が追いついておらず、労働者の処遇改善が期待される。一方で企業にとっては人件費上昇につながることから、関西に多く集積する中小企業が負担増に耐えられるかどうか懸念もある。
一方で「小規模事業者には賃上げできないところもあり、(企業により)相当差がある」とも述べ、生産性向上や業務効率化を後押しするデジタルトランスフォーメーション(DX)などを進める必要があるとした。
大商が今年、関西企業351社から回答を得た調査では、賃上げを実施予定とした中小企業のうち61・3%が「業績改善はないが実施」としており、人手を確保するための「防衛的な賃上げ」の側面が目立った。
大商のヒアリングでは、「業況が大きく伸びているわけではないが、人件費は増大せざるを得ず、戦々恐々としている」(人材斡旋(あっせん)業)といった声が聞かれた。