◆方向性は一致も…引き上げ幅で攻防
目安を議論する小委員会は6月25日~7月18日に3回開催された。労働者側と経営者側を代表する委員はともに2023年度同様、最賃を引き上げる方向性では一致している。
ただ、引き上げ幅を巡る攻防は続いている。10日の第2回小委で労働側は、物価高で最賃に近い時給の人の生活は厳しくなっているとして「昨年以上の大幅な目安額を提示すべきだ」と発言。現行制度になって最大の上げ幅だった23年度の43円(前年度比4.47%)を上回ることを目指す。経営側は「中小企業に支払い能力を超えた過度な引き上げによる負担を負わせない配慮を」とけん制する。
◆非正規の賃上げに直結
最低賃金法第1条は「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障する」と定める。パートやアルバイトら非正規の多くは労働組合が職場にないため経営側と賃金を交渉する手段を持たない。厚労省の委託調査で、最賃に近い時給の人のうち、時給が上がった人に理由を聞くと「最賃が上がったから」と答えた人が75.4%(複数回答)と最も高かった。最賃の引き上げは、非正規の賃上げにつながっている。
◆水準はフルタイムの45.6%、仏英独韓と大差
ただ、最賃の水準は主要各国と比べると低い。内閣府の日本経済リポート(23年度)によると、フルタイム労働者の賃金の中央値に対する最賃の比率を各国で比べた調査で、22年は日本が45.6%だった。フランスは60.9%、英国58%、ドイツ52.6%、韓国60.9%といずれも日本を上回っている。
今後日本が最賃を引き上げていく際の課題は、中小零細企業の人件費負担だ。
厚労省によると、引き上げ後に最賃額を下回る賃金で働く労働者の割合は、5人以上の事業所では8.1%(23年)で該当労働者数は約360万人だった。30人未満の事業所に限定した別の調査では、21.6%の約350万人(同年)と割合が高まる。
◆指標の導入求める声
最賃の長期的な目標について政府は「1500円」を早期に達成することを掲げる。連合は、25年度ごろまでに全国で1000円以上を達成した後、一般労働者の賃金の中央値の6割水準を目指すと提言する。
山田教授は引き上げ額の妥当性を労使が確認できるように、最賃の全国加重平均額が、全労働者(正社員やパートら含む)の平均賃金の50%となる指標の導入を提案する。審議会の議論で活用すれば「一つの指標で労働者側は格差是正を検証し、企業側は人件費の負担感を見ることができる」と話す。