特定秘密 日本は行政機関の長が防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野の情報のうち、漏えいが安全保障に支障を与える恐れがあるものを特定秘密に指定。この要件を満たさなくなれば解除するが、基準が曖昧と指摘されている。米国では大統領令に基づき秘密指定し、国立公文書館の部局として設置された「情報保全監察局」に解除請求権が与えられ、恣意的な指定を防ぐ実効的な仕組みが整えられている。
◆身辺調査で「適性評価」
特定秘密保護法は米国との情報共有の円滑化を背景に制定され、防衛や外交など4分野の機密情報を特定秘密に指定。漏えいリスクを確認するための身辺調査を伴う「適性評価」で認定された人のみ情報を扱う。
防衛省によると、漏えいなど計58件確認された不適切運用のうち、38件が艦艇部隊で行われ、特定秘密を含む艦橋や戦闘指揮所(CIC)で適性評価を受けていない隊員が情報を扱うなどしていた。無資格者が特定秘密を知りうる状態に置かれた場合も漏えいに当たるが、その認識が海自になかったという。
◆経済安保にも事実上拡大
ルールに則した管理ができていなかったと言えるが、そもそも特定秘密の指定が妥当だったのかという問題もある。昨年末時点で各府省庁が指定した751件のうち、防衛省が429件と圧倒的に多い。
特定秘密の運用状況をチェックする衆院情報監視審査会は17日、木原稔防衛相に出した改善勧告で、防衛省の機密区分が「特定秘密」と「秘」しかないため、特定秘密が拡大している可能性に言及。木原氏は19日の記者会見で「指定は法律の要件に基づき厳格に判断している」と反論した。
政府の公文書管理委員会で委員長代理を務めた三宅弘弁護士は「厳重な管理をしていないということは、必要性の低い情報まで特定秘密に指定していたことを示している」と批判する。
ずさんな情報管理が明らかになったことで、来年5月までに施行される重要経済安保情報保護法に対する懸念も広がる。新法は、政府が経済安保に関する重要情報を指定し、適性評価で認められた民間事業者らが情報を扱う。特定秘密保護法と一体的に運用し、特定秘密の範囲が経済安保の分野にも事実上拡大する。
◆「膿を出しきらなければ」
高市早苗経済安保担当相は19日の記者会見で、新法への影響について「重要情報を扱う人への教育の機会をつくっていく」と述べるにとどめた。三宅氏は「適性評価を民間に広げて適切に情報管理できるのか。これまでの膿(うみ)を出し切らなければ、同じような制度を作っても成功しない」と指摘した。