規制委は5月末の審査会合で2号機近くの敷地内の断層について「活動性を否定することは困難」との判断を示している。間接的な表現だが、当該断層を活断層と断定した宣告だ。
さらに規制委は、この断層の「連続性」についての結論を7月中に下す見通しだ。「連続性の否定は困難」とされると「活動性」と「連続性」の要素が合体し、活断層が2号機建屋の真下を走っている―ということになってしまうのだ。
廃炉への引導はならぬ
そうなれば、敦賀2号機は新規制基準に不適合となり、再稼働への道は閉ざされる。
こんな展開が予見される議論が規制委の審査会合で進んでいる。強引に引導を渡す気か。黙過できない事態である。
焦点となっているのはKと命名された、発電所敷地内の逆断層で2号機の北方に位置している。日本原電は縦横70メートル、深さ45メートルの巨大な調査溝を掘って地層や断層の様子を精査しており、12年前からK断層が2号機に影響を及ぼさないことの証明に取り組んできた。
長年の調査で日本原電は2号機の下を走る岩盤の割れ目が活断層でないとする主張の多くを科学的に裏付けているのだが、一部については約40年前の建設工事で土地が削られているなどしてデータが不足している。
規制委と事務局の原子力規制庁はこうした不足部分などを突いて「可能性が否定しきれない」の論法を駆使することで日本原電の主張を退けてきた感がある。「悪魔の証明」といわれる弁論手段を工学の世界に持ち込むのは極めて不適切だ。
7月下旬にもK断層に関する規制委の最終判断が出る見通しだが、日本原電は丁寧な審査の継続を望んでいる。規制委はなぜ審査の幕引きを急ぐのか。
日本原電に反論準備の時間を与えたくないための戦略とみられても仕方あるまい。
規制委の役割は原子力発電の安全性を高めることであり、再稼働の抑制ではないはずだが、東日本大震災後に再稼働を果たした原発は12基に過ぎない。「原発を安全に動かすより、止めておくことに主眼を置いている」と厳しく批判する識者の声もあるほどだ。こうした外部の声に耳を傾けるどころか、敦賀2号機を廃炉に追い込みかねない審査である。
安全性高めて活用せよ
規制委は、なぜ7月下旬に向けて結論を急ぐのか。審査が12年に及んでいることを理由にするなら、日本原電が望む追加調査のために、例えば半年待っても大差あるまい。
7月下旬に固執すると現在、断層問題の審査に関わる規制委員が9月に任期満了となる前に結論を出そうとしているのではとの疑念も抱かれよう。
7月下旬なら国会も閉会中で議員からの質問も受けずに済ませられる。パリ五輪の開幕前夜と重なれば国民の関心も集まりにくい。こうした都合での日程なら、言語道断である。
原発は資源貧国の日本にとって不可欠のエネルギー源であることを忘れてはならない。政府は経済成長と脱炭素を両立させるGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針で、原発を最大限活用する方針を示している。
緊張を増す国際情勢の下、エネルギー安全保障の重要性は高まりを見せ、生成AI(人工知能)の普及で電力需要の増大が見込まれている。