斎藤知事のパワハラを告発した兵庫県元幹部が死亡 百条委員会出席で紛糾していたプライバシー問題(2024年7月10日『デイリー新潮』)

キャプチャ
兵庫県の斎藤元彦知事
 兵庫県の斎藤元彦知事(46)のパワハラなどを告発し、同県議会としては51年ぶりとなる百条委員会(地方自治法100条に基づく調査特別委員会)の設置につなげた元西播磨県民局長(60)が、7月7日に亡くなっていたことがわかった。自死とみられている。19日には証人として百条委員会に出席する予定だった。
 
キャプチャ2
 ***
 とある県議会関係者が悔やむ。
「あと1日、待ってくれていたら……」
 7月8日午前9時半、百条委員会の緊急理事会が開かれ、そこで告発文とは無関係の資料について開示の要求をしないことが決議されたという。
 そもそも今回の百条委員会は、元県民局長の告発文に記載されている7項目の内容の真偽を確認するために設置されたものだ。それ以外の資料など、ハナから関係ないはずだ。
「ところが、関係のない資料の開示を求める動きがありました」
 デイリー新潮は6月23日配信の「パワハラ疑惑で百条委員会設置の兵庫県知事 告発文を書いて、嘘八百呼ばわりされた県職員(60)は今どうしている? 『3月末で退職するつもりだったのに…』」で、百条委員会設置までの経緯について報じた。簡単に振り返ってみよう。
 3月中旬、「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」と題したA4サイズ4枚、7項目におよぶ告発文が、一部の県議や報道機関に匿名で配布された。県人事課は直ちに告発文を書いた職員の割り出しに動いた。そこで浮かんだのが、当時の県民局長だった。別の県議会関係者が言う。
押収されたパソコン
「3月25日、県民局長が勤務する西播磨県民局に副知事と人事課長が乗り込みました。神戸にある県庁舎と西播磨県民局は100キロ以上も離れているのですが、そこへアポなしで訪れ、県民局長のパソコンを押収していったのです」
 パソコンには配布された告発文のデータが残っていた。県民局長はその内容について特に問われることがないまま、2日後の27日に局長を解任され、4日後の退職予定を取り消されたのだ。この処分について斎藤知事は「業務時間中に嘘八百含めて文書を作って流す行為は公務員として失格」と言い放った。ところが“嘘八百”とは言いきれない証拠が出てきたため、遂に百条委員会設置へと繋がったのだ。
「6月14日に第1回会合、27日に第2回会合が開かれ、いよいよ7月19日に証人として元県民局長に出席を求めることが決まりました。ただ、そこで彼のパソコンに残っている他の文書まで開示しようとする動きがあったのです」
 どんな内容のものだろうか。
「詳しくはわかりませんが、知事の不正とは全く関係のないもので、元県民局長にとっては他人に知られたくない、ごく私的な内容だったそうです」
 前述の通り、百条委員会の目的にそぐわない内容なら開示する必要はない。
維新会派の反対
「そうした動きがあることが元県民局長にも伝わったようです。そのため彼の代理人が県人事課に、プライバシーに関わる資料については十分に配慮するよう申し入れた。ところが、人事課は開示に支障があるなら百条委員会に申し入れるように言ってきたそうです。あらためて代理人は百条委員長宛に、調査目的以外の資料は開示しないよう申し入れたのです。それでも一部の知事に近い県議は、黒塗りもせずに文書を出させようとしていた。元県民局長はかなりナーバスになっていたと人づてに聞いていましたが、だからといってこちらも大丈夫とは軽々しくは言えませんでした。その資料がどんな内容なのか、それがどう使われるのかもわからなかったからです」
 そのため緊急理事会が開かれ、告発文とは無関係の資料について開示の要求をしないことが決議された。だが、元県民局長はその前に死を選んでしまったのだ。一体何のために百条委員会とは無関係の資料を求めたのか、そして、それを求めたのは誰なのか――。
「元県民局長の個人攻撃をすることで、告発文が信用できないものとしたかったのかもしれません。それが誰によるものかは言いませんが、緊急理事会で無関係の資料を非開示とすることに反対したのは日本維新の会の議員だけでした」
 斎藤知事は大阪以外で初めて誕生した維新系知事として知られる。百条委員会設置に反対していたのも維新の議員たちだった。
「緊急理事会で維新のある議員は、『元県民局長は告発文の中で、知事の自宅や好き嫌い、知事以外のプライベートなことを取り上げておいて、自分のプライベートな部分は出せないというのはあまりに身勝手だ』といった発言をしていました。目には目をということなのでしょうか。そもそも兵庫県の情報公開条例には個人として他人に知られたくない情報については非公開と言うことが定められていますから、条例違反に当たります。言っていることは滅茶苦茶ですし、資料の内容を知っているような言い方もおかしい」
 当然ながら、他の回派から反対意見が出て、調査委関係のない資料は一切提出を認めないことが賛成多数で可決された。だが、当の元県民局長が亡くなってしまったのだ。7月19日の百条委員会はどうなるのだろう。
「証人尋問ができないので、流会になると思います。あらためて今後の百条委員会について各会派の意見を求めることになるかもしれませんが、斎藤知事の不正を有耶無耶にしてはならないと思っています」
デイリー新潮編集部