アベノミクスの「裏の立役者」!?文春元編集長が見つけ出した安倍政権の秘密の「ブレーン」の正体(2024年7月10日

現代ビジネス

権力の監視はメディアの使命なので「御用記者」に成り下がってはいけない。しかし、政治家にただ厳しい言葉を重ねても、それは真の「批判の剣」ではない。そんなジレンマを抱えながら、安倍晋三菅義偉梶山静六細川護熙をはじめとする大物政治家たちから直接「政治」を学び、彼らの本質と向き合った「文春」の元編集長がいた。

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数々のスクープをものにした著者がキャリアを赤裸々に語りつくした『文藝春秋と政権構想』(鈴木洋嗣著)より抜粋して、政権幹部と語り合った「密室」の内側をお届けしよう。 「文藝春秋と政権構想」連載第8回 『「安倍長期政権」成立の舞台裏...「菅義偉」が周りの反対を押し切ってまで「安倍晋三」を担ぎ続けた意外なワケ』より続く

安倍が総裁に

わたしはテレビ中継で歓喜に沸く自民党本部の安倍の姿を見て、「今回はしくじったな」という思いを強くしていた。月刊「文藝春秋」にとって、新政権の政権構想を掲載するのは当然という意識があった。 たかが雑誌編集者の分際で思い上がっている部分もあるに違いないが、これが若い時分から課せられてきた仕事であった。実際、歴代の編集部も、あらたに就任した総理大臣、あるいはその有力候補のインタビューをものにしていた。このとき、わたしは月刊誌の編集長を下ろされたばかりで文春新書編集部長の職にあった。 民主党政権がつぶれ自民党が政権に復帰する、その政治史においての転換点、要の場面で時の政権構想を掲載できないのはあり得ない。誰に命じられたわけでもなく、しかも担当部署でもないのに動き出した。

政権構想を捉える

自民党総裁となったこの時点で、安倍政権誕生が確実視されていた。 まずは菅に会いに行かなくてはならない。菅との面談のアポが取れたのは10月11日、衆議院第二議員会館の菅の応接室だった。執務室から入ってくる菅を認めるなり開口一番こう言った。

「安倍さんを担ぐのをやめようなどと言ったのは、まったくの不明でした……。これから(総選挙を経て)第二次安倍政権誕生となるわけですが、ついてはお恥ずかしいのですが、政権構想をいただきたい」 この厚かましい依頼に、菅は声もなく笑っていた。多くを語らず、 「じゃあ、総裁特別補佐の加藤(勝信)に会ってくれ」 と段取りをつけてくれた。数日後、自民党本部の総裁室に加藤を訪ねた。そのとき、初対面であった加藤は万事心得たとばかり対応してくれた。年内にも実施される予定の総選挙(結局12月16日投票となった)に臨むための政権構想づくりに着手することとなった。 この時期に菅はわたしにこう洩らしていた。

「実は我々のブレーンには大蔵省出身のすごい大学教授がついているんだ」 安倍の新たなブレーンとはいったい誰なのか。大蔵省出身と聞いて、すぐに旧知の財務省官房長の香川俊介(昭和54年大蔵省入省)に連絡をとった。これまでの経緯を簡単に説明したのち、 「安倍さんのブレーンに御社(財務省)出身の大学教授がいると聞いたのですが、心当たりはありませんか」 と尋ねると、香川は 「うーん、誰かなあ」 と唸って黙りこんでしまった。

謎の「ブレーン」

鈴木 洋嗣