安倍氏銃撃2年、凶弾余波いまも 高額献金、被害救済道半ば(2024年7月8日『共同通信』)

奈良市内の霊園に新たに設置された、安倍元首相の足跡などを記した石碑=7日
 安倍晋三元首相が奈良市で選挙の応援演説中に銃撃され、死亡した事件から8日で2年となった。現場には献花台が設置され、多くの人が訪れた。事件を機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金問題や「宗教2世」の厳しい境遇が社会の注目を集めたが、再発防止や救済は道半ば。
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甲子園球場のスタンドから応援する山上徹也被告(高校の卒業アルバムから)
 近鉄大和西大寺駅前の現場は事件後、車道として整備された。近くに慰霊碑はなく、自民党奈良県連が7日、一般向けの献花台を設置した。
 事件は2022年7月8日午前11時半ごろ発生。山上徹也被告(43)が安倍氏を手製銃で銃撃し殺害したとして殺人罪などで起訴された。母親が教団に多額の献金をしており「(教団を韓国から)招き入れたのは岸信介元首相。だから(孫の)安倍氏を殺した」と供述したとされる。
 政府は昨年、寄付の強要などを規制する不当寄付勧誘防止法を施行し、教団への解散命令を東京地裁に申し立てた。しかし国会議員が旧統一教会から選挙協力を受けたケースが次々と明らかになり、救済策に対しても宗教2世ら当事者から「不十分」との声が上がっている。

総選挙見据え、入念準備 要人警護、急な演説に対応 安倍氏銃撃2年(2024年7月8日『時事通信』)
 
 安倍晋三元首相銃撃事件は、要人警護の在り方を抜本的に見直す契機となった。
 事件後初めてとなる衆院解散・総選挙を見据え、警察庁と各都道府県警は演説場所の事前調査を行うなど入念な準備を進めている。
 事件では奈良県警の警護計画に問題があったとされ、警察庁は2022年8月から、都道府県警任せだった警護計画案を全て事前審査する仕組みを開始した。同庁が審査した計画案は今年6月末時点で約6300件に上り、幹部は「教訓が蓄積されている」と話す。
 ただ、総選挙となれば全国から一斉に計画案が提出され、警察庁の負担は重い。選挙遊説は直前に決まることが多く、元首相銃撃事件でも県警に日時や場所が伝わったのは前日午後だった。
 このため急な対応を迫られても計画案の策定や審査が確実にできるよう、警察庁都道府県警と候補地を下見する「予備審査」を実施。これまでに演説の実績がある駅前広場やホールなど約700カ所を下見した。主催者側への聞き取りを踏まえ、聴衆との距離を確保できるかどうかや、死角の有無などを確認し、警護員の配置を検討する。安全上問題があると判断すれば、代わりの場所を探すよう求める。
 23年4月には、遊説中の岸田文雄首相に爆発物が投げ込まれる事件が発生。警察庁は、受付での金属探知検査など、安全対策を徹底するよう主催者への働き掛けを強化している。
 政治家の間では、選挙戦での有権者との触れ合いや距離の近さを重視する考えが根強い。ある幹部は、手荷物検査などについて「事前に(政治家側の)理解を得ていても、選挙情勢によっては協力してもらえないケースがあるかもしれない」と懸念。別の幹部は「あらゆる事態に対応できるよう計画を作る」と、再発防止に向けて気を引き締めている。 

安倍元首相「国を背負い奮闘に敬意」 献花台設置、功績の碑も公開 銃撃からあす2年(2024年7月7日『産経新聞』)
 
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安倍晋三元首相への銃撃から2年を前に元首相の慰霊碑「留魂碑」の献花台に花を手向け、手を合わせる男性(右は新たに設置された石碑)=7日午前、奈良市の三笠霊苑(甘利慈撮影)
 
 参院選中の銃撃による安倍晋三元首相の死去から8日で2年となるのを前に7日、安倍氏の慰霊碑「留魂碑(りゅうこんひ)」がある三笠霊苑(奈良市)と銃撃事件の現場となった近鉄大和西大寺駅前(同)に献花台が設置された。朝から多くの人が訪れ、手を合わせて安倍氏の死を悼んだ。
 霊苑ではこの日から、新たに設置された安倍氏の功績を刻んだ石碑(幅約130センチ、高さ約80センチ)も公開。石碑を見た大阪府寝屋川市の会社員、永井利明さん(53)は「日本だけでなく世界でもリーダーシップを発揮し、改めて傑出した方だと感じた。安らかに見守ってほしい」と話した。
 兵庫県西宮市の会社員、坂本雄二さん(60)は「刻まれた功績の裏には数々の苦労があったことと思う。国を背負って奮闘してくださったことに敬意を表したい」とたたえた。
 一方、大和西大寺駅前では、昨年の一周忌の際に銃を模した不審物を掲げた男が現れたことなどを受け、今年は自民党奈良県連による手荷物検査を実施。堺市の高校3年生、林功祐(こうすけ)さん(17)は「テロ対策のため、荷物検査があるのは当然だと思う。(ここに来た人は)騒がずに、静かに手を合わせてほしい」とした。
 霊苑と大和西大寺駅前には8日も献花台が設置される。霊苑は午前10時~午後5時、駅前は午前9時~午後5時。ともに供えられる物は花のみで、気象警報が発表された場合は中止する。