自民総裁選、全国遊説は厳戒態勢 世論アピールとバランス苦慮(2024年8月26日『時事通信』)

衆院東京15区補欠選挙。立候補者の街頭演説会に向け、厳重な警備体制を敷く警察官ら=4月21日、東京都江東区

衆院東京15区補欠選挙。立候補者の街頭演説会に向け、厳重な警備体制を敷く警察官ら=4月21日、東京都江東区

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 これまで総裁選では候補者が全国各地でそろって街頭演説や討論会を行ってきた。前回2021年の総裁選は、新型コロナウイルスの感染拡大によりオンラインでの討論会を余儀なくされたが、12年に安倍晋三氏ら5人が立候補した際は、北海道から沖縄まで全国約20カ所で演説会を開いた。

 今回、党内からは「自民の命運が懸かった最後のチャンスだ」(鈴木貴子青年局長)として、選挙期間を長くし、街頭演説などを最大限開催するよう求める声が上がった。こうした要請を踏まえ、選挙期間は現行規程となった1995年以降で最長の15日間に決定。演説の機会も増やす方向だ。

 ただ、全国遊説は慎重に検討せざるを得ない。7月にトランプ氏が大統領選に向けた選挙集会で銃撃を受けて負傷。国内でも22年7月、安倍氏参院選の遊説中に銃撃されて死亡し、23年4月には、岸田首相が衆院補欠選挙の演説中に爆発物を投げ込まれる事件が発生した。

 党関係者は「これまでの総裁選より厳しい警備が必要だ」と指摘。演説会では、金属探知機による手荷物検査や防弾パネルの設置などの対策が取られるとみられる。実際、岸田首相が7月31日に視察先の三重県で記者団の取材に応じた際には、透明な防弾パネルが正面と側面に設置された。

 警備の観点から、演説会は街頭よりも、警備がしやすい屋内会場で多く実施する案も検討されている。しかし、屋内会場では参加者が党員中心となり、無党派層へのアピールに欠ける点が課題として挙げられている。

 自民は来月初めに、具体的な演説場所を決める予定。選管委員の一人は「新しい党を作り上げていく論戦を国民に示したい」と語るが、安全確保とのバランスに苦慮しそうだ。