米兵性犯罪の情報提供、沖縄県知事は「一歩前進」と評価するが…「全て報告されるか不信感拭えない」声も(2024年7月6日『読売新聞』)

キャプチャ
 沖縄県内で起きた米兵による性暴力事件のうち、捜査当局が公表しない事件も政府が県に情報提供する運用を始めた。不信感を募らせていた玉城デニー知事は率直に評価した一方、市民からは実効性に疑問の声も聞かれた。
キャプチャ
 「一歩前進。一定の確認と整理ができた」。5日夕、玉城氏は報道陣に語った。懸念される被害者のプライバシー保護については「万全を期していきたい」と気を引き締め、「必要最小限度の状況を県民に知らせ、米側に綱紀粛正を強く求めていくことも可能だ」との認識を示した。
 また、政府には「米側に対し、再発防止の取り組みも含め、丁寧な情報提供を求めてほしい」と注文。米兵の教育管理の徹底については「研修プログラムの内容などの情報提供があれば、より県民の安心につながると思う」と述べた。
 県女性団体連絡協議会の伊良波純子会長(63)は「全ての性暴力事件が報告されるのか、不信感が拭えない」と懸念。被害者のプライバシー保護を前提に、「女性を性犯罪から守る予防策や支援策を考えるためにも情報は開示しなければならない」と訴えた。
連絡は21年7月が最後
 米軍による事件・事故の連絡体制は日米合同委員会で1997年に合意した。県によると、2012年の集団強姦致傷事件や16年の準強姦事件などは逮捕当日に県警や沖縄防衛局から連絡を受けたが、21年7月に容疑者が逮捕された強制性交未遂事件を最後に途絶えていた。
 先月25日以降、少女への不同意性交事件と成人女性への不同意性交致傷事件が発覚。県警が昨年以降摘発した3件を含め、5件の連絡がなかったことが明らかになった。ある県警幹部は「被害者保護の観点がこれまで以上に求められる時代になっている」と語る。
 00年代に幹部だった県警OBは「米軍関係事件は全て県に報告していた。凶悪事件を知らせない対応は理解できない」と話す。被害者のプライバシーについては「SNSでの拡散は情報を隠す理由にはならない。共有して防犯意識を高め、再発防止を図ることも県警の役割だ」と語った。