米兵性犯罪、沖縄県への連絡遅れ相次ぐ…「被害者のプライバシーを配慮」政府の釈明に県反発(2024年6月29日『読売新聞』) 

 沖縄県内で発生した米兵による性犯罪事件を巡り、捜査当局と政府の間で共有された情報が、県に迅速に伝達されないケースが相次いでいる。政府は被害者のプライバシーを配慮して公表しないとした捜査当局の判断を踏まえたと釈明するが、県は日米間の事件・事故の通報手続きが機能していないとして反発している。

 那覇地検は17日、県内で5月、性的暴行をしようとした女性にけがをさせたとして、米兵を不同意性交致傷の罪で起訴した。岡野正敬外務次官は6月12日、ラーム・エマニュエル駐日米大使に再発防止徹底を申し入れたが、県に情報を伝えていなかった。政府は事件発生が明らかになった28日に県に連絡した。

 在日米軍による事件・事故の情報は、1997年の日米合同委員会で、外務省や沖縄防衛局が米側から連絡を受け、県に伝えると定められた。だが、今回の事件は迅速な情報共有は行われなかった。

 別の米兵が昨年12月に少女を誘拐して性的暴行を加えたとして今年3月27日に起訴された事件でも、岡野氏が起訴当日にエマニュエル氏に再発防止を申し入れたが、政府が県に事件内容を伝えたのは問い合わせを受けた6月25日だった。

 上川外相は28日の記者会見で、速やかに政府が県に伝えなかった理由について、「捜査当局は関係者のプライバシーや捜査、公判への影響の有無などを判断した上で、公表するか否か判断した。外務省としてもその判断を踏まえて対応した」と説明した。

 沖縄県は政府の対応を批判している。県内では、各党関係者が外務省沖縄事務所や沖縄防衛局を相次いで訪れ、情報提供の徹底を要請。県議会では、自民、公明両党を含む超党派で抗議決議・意見書案提出に向けた議論が始まった。那覇浦添両市議会なども抗議決議・意見書を可決している。

 

在沖米空軍兵による少女へのわいせつ目的誘拐及び不同意性交等罪事件に 関する意見書 
昨年12月、本島中部で16歳未満の少女を車で誘拐し自宅に連れ去り、同意なく性的暴行を加えたとして、那覇地検が嘉手納基地所属の米空軍兵長をわいせつ目的誘拐及び不同意性交等罪で起訴したことが明らかとなり、市民・県民に不安や憤りの声が上がっている。 
さらに、少女の性的暴行という重大事件にも関わらず3月27日の起訴から約3か月もの
間、外務省や県警等から県に対し情報提供がなく公表していなかったことも明らかになっている。 
本土復帰後、令和4年(2022 年)までの 50 年間で米軍人・軍属及びその家族による刑
法犯罪の摘発は6,163件で、そのうち殺人や強制性交などの凶悪犯は584件となっており、凶悪事件は後を絶たない状況である。 
本市議会は令和4年にも米海兵隊員による強制性交等致傷事件に関し意見書・抗議決議
を全会一致で可決し、米軍人・軍属等の綱紀粛正の徹底や抜本的かつ具体的で実効性のある再発防止策を講じることなどを強く求めてきたが、繰り返される米兵等による蛮行は、女性の尊厳を踏みにじり市民・県民の生存権を脅かすものであり、綱紀粛正が何ら果たされていないことは、激しい怒りを禁じえない。さらに、事件発生後、関係機関等への迅速な情報伝達や市民・県民への公表が遅れたことに対しても疑問を呈さざるを得ない。 
よって、本市議会は市民・県民の人権や生命、財産を守る立場から、今回の米空軍兵長
によるわいせつ目的誘拐及び不同意性交等罪事件に対し、厳重に抗議するとともに、関係機関に対して、下記事項の徹底、実現を強く求める。 
記 
1 被害者への謝罪及び完全な補償並びに丁寧な精神的ケアを行うこと。 
2 米軍人・軍属等の綱紀粛正の徹底と、抜本的かつ具体的で実効性のある再発防止策を
講ずること。 
3 容疑者の身柄の即時引き渡し、日米地位協定の抜本的改正を図ること。 
4 過重な米軍基地負担の解消に向け、在沖米軍基地の整理・縮小を推進すること。 
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 
令和6年(2024年)6月27日  
那覇市議会 
あて先:衆議院議長参議院議長、内閣総理大臣内閣官房長官外務大臣防衛大臣、 
沖縄及び北方対策担当大臣、沖縄防衛局長 

 

米兵による少女連れ去り及び性的暴行事件に対する抗議決議 
昨年12月24日、嘉手納基地所属の米空軍兵長沖縄本島中部の公園で16歳未満の少女を連れ去り、同意なく性的暴行を加えたとして、わいせつ目的誘拐と不同意性交の罪で、3月27日付で起訴されていたことが報道によりわかった。 
この米兵による蛮行に激しい怒りと憤りを覚えるとともに改めて県民に強い衝撃と不安を与えている。 
又も発生してしまった凶悪な事件に、米軍の再発防止策の弱さを指摘し、抜本的な改善策を求めるものである。 
よって本市議会は、今回の事件に対し満身の怒りを込めて抗議するとともに、事件・事故の実効性ある再発防止に向けて下記のとおり強く要求する。 
記 
1.事件の全容を解明するとともに速やかに公表し、誠意ある対応を行うこと。 
2.市民・県民が安心して生活することができるよう、実効性ある再発防止策を講じること。 
3.日米地位協定の抜本的な見直しを図ること。 
以上、決議する。 
令和6年(2024年)6月26日 
宛先 
沖縄県浦添市議会 
米国大統領、米国国防長官、米国国務長官、駐日米国大使、在日米軍司令官、
在日米軍沖縄地域調整官、在沖米海兵隊太平洋基地司令官、在沖米国総領事、 
外務大臣、外務省特命全権大使(沖縄担当)、沖縄県警察本部長