日本医師会や経団連の幹部がズラリ!岸田「改憲1万人集会」の背後にあの極右団体「日本会議」の影(2024年7月4日『現代ビジネス』)

 
日本医師会のドン」が持つ人脈
 
発足直後から政府トップとの面会を繰り返し、要望を伝えてきたフォーラムはどんな組織なのか。
会長は、日本製鉄名誉会長の三村明夫氏。共同代表は日本医師会名誉会長の横倉義武、九州経済連合会名誉会長の松尾新吾ら各氏が務める。
また、フォーラムの発起人には経団連青年会議所建設業協会、郵便局長会、JA​全中、歯科医師会、製薬団体連合会など約30団体の代表が加わっている。彼らは古くからの自民党の支援組織であり、カネや票の源となってきた。冒頭の大会の参加者もこうした団体から動員されたものだ。
本誌は、フォーラムで事務局長を務める濱口和久拓殖大特任教授から話を聞くことができた。
「これだけの発起人を集められたのは横倉代表の人脈があったからです。4期8年にわたって日本医師会の会長を務めた横倉代表は、医療界だけでなく、財界にも顔が利く」
一方、企画委員長を務める松本尚・日本医科大特任教授は、改憲論議におけるフォーラムの役割を次のように語る。
「裏金事件の影響もあり、今国会の憲法審査会は審議が停滞しました。国会で議論が不足している部分を、フォーラムの提案によって後押しできたと自負している。岸田首相からも『民間からの提案はありがたい』と評価してもらっている」
運営にあの「日本会議」の幹部が…!
憲法改正をめざし、フォーラムは政界、財界などを巻き込む台風の目になりつつある。一方、冒頭の大会ではステージ脇で進行を見守るある男性の姿があった。日本青年協議会(以下、日青協)の中山直也氏だ。日青協は、半世紀以上にわたって右派活動を牽引してきた団体である。
日青協にとって日本会議はフロント組織の一つ。日青協は、表看板である日本会議を通じて、元号法国旗国歌法の制定、'06年の教育基本法改正などの右派運動を進めてきた。その最終的な目的こそが、憲法改正なのです」(『日本会議の研究』などの著作がある著述家の菅野完氏)
つまり、憲法改正を訴えて岸田首相にも提言するフォーラムに、同じく憲法改正を掲げる右派組織「日本会議」の関係者が関わっていたのだ。実際、前出の濱口事務局長らも「中山氏はフォーラムの運営に事務局として関わっている」と認める。
あらためて検証すると、横倉代表は、日本会議の設立20周年に祝辞を送っていたことが、日本会議のホームページで確認できる。また日本会議福岡のホームページを見ると、松尾代表が会長職に就いていることもわかる。
さらに、日青協の機関誌『祖国と青年』には、中山氏が寄稿者として何度も登場している。'16年2月号では、日青協代表の肩書で巻頭言を飾り、「国会は発議に向け、改正条項の絞り込みを」というタイトルの論考が掲載された。ここで中山氏は、改憲への近道は、多党間で必要性を合意した緊急事態条項の審議に絞ることだと述べている。
中山氏にフォーラムとの関係を聞くため自宅を訪ねたが、家人が「おりません」と言うのみ。日青協に書面で尋ねたが期限までに回答はなかった。
日本会議は、安倍政権の保守路線が絶頂を迎えた'16年頃に注目された。前出の菅野氏は「'22年の安倍晋三元首相の死の衝撃が、日本会議に与えた影響は大きい。改憲の可能性が後退し、新たな運動を模索している最中ではないか」と指摘する。
任期中の改憲が頓挫し、もがく岸田政権に対して、彼らがどのような動きを見せるか。注目である。
取材・文/宮下直之(「週刊現代」記者)
 
週刊現代」2024年6月29日・7月6日号より