大手メディアは一切無視。小池百合子都知事と三井不動産の「癒着」関係と都庁元幹部14人の天下り(2024年6月25日『『高野孟のTHE JOURNAL』』)

7月7日の投開票に向け、熱い選挙戦が繰り広げられている東京都知事選。現在小池百合子氏のリードが伝えられていますが、「しんぶん赤旗」の現職知事を巡るスクープを報じる大手メディアはほとんどないのが現状です。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、そんな記事内容を要約し紹介。その上で、現在大問題となっている神宮外苑再開発を始めとする「政官業のべたつきの構造」を白日の元に晒すとともに、その打破の必要性を訴えています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:東京を食い物にしてきた小池知事と三井不動産の癒着/なぜ大手マスコミは6/16「赤旗」報道をフォローしないのか?
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
 
小池百合子氏と手を組み“再開発利権”で東京を食い物に。三井不動産天下りした14人の都庁元幹部
6月16日付「赤旗」の「都幹部14人、三井不動産天下り」は時宜を得たスクープだが、これをフォローしたのは「アサ芸プラス」(17日付)や「日刊スポーツ《政界地獄耳》」(18日付)など一部のネットメディアだけで、大手マスコミは今に至るも無視したままである。もちろん、20日の告示を目前にして、自分らで取材を重ねて固めてきた訳でもない事柄を他紙が軽々に追っかけて取り上げることなど出来るはずもないのだが、それにしてもマスコミが、小池百合子知事の8年間に日本の首都で一体何が起きてきたのか、その構造的な問題性をほとんど何一つ掘り下げようとしてこなかったことを改めて浮き彫りにしたのがこの一件である。
このままでは、「赤旗」報道の事実さえ多くの人々に知られずに都知事選が進んで行くことにもなりかねないので、以下でまず同報道の要点を紹介し、さらにそれに関連するいくつかの問題点について他の資料をも適宜、私の古いファイルボックスから引っ張り出して参考に供することとする。
「企業による行政の買収」との指摘も。都幹部14人が三井不動産天下り
【第1面の本記】
赤旗」のその記事の本記はWeb上で無料で読むことが可能だが(★)、忙しい方のために要点をここで紹介する。見出しは「都幹部14人、三井不天下り/選手村・外苑…知事肝煎り再開発」である。なお第11面の関連解説「癒着深める小池都政/破格の“開発業社ファースト”」はWebでは読めない。
 
★ 都幹部14人 三井不天下り/選手村・外苑…知事肝煎り再開発
東京都にある旧五輪選手村(現晴海フラッグ)や神宮外苑再開発などの大型再開発を主導する三井不動産グループ2社に、都局長ら幹部14人が天下りしていたことがわかった。いずれも小池知事が肝煎りで進める事業。14人のうち8人が再開発事業を所管する都市整備局(旧都市計画局)の元幹部で、元局長2人が含まれる。三井不動産には都市整備局元局長ら12人、三井不動産レジデンシャルに2人が天下りしていた。
五輪選手村用地は、三井不動産レジデンシャルを代表企業とする大手不動産11社に都が近隣地価の9割引きで売却したとして住民らが損害賠償を求めて提訴している。樹木を伐採し超高層ビルを建設する神宮外苑再開発を巡っては、反対の声が広がっている。
〔市川隆夫・臨海都民連事務局長の話〕
私たちは35年前から臨海副都心など都の大型開発を監視してきた。五輪選手村や競技施設は、都が五輪招致に立候補した時点からデベロッパーやゼネコンなどが準備を進め、都幹部の天下り受け入れを増やした疑いがある。天下り幹部の中には現役都職員と接触し、職員の職務に影響を及ぼした例も聞いている。都幹部の天下りは“企業による行政の買収”に該当する疑いがある。
三井不動産系2社に天下りした東京都の元幹部》
三井不動産 12人
※都市計画局長
※都市計画局長→建設局長
 都市計画局参事
 都市計画局課長
 都市整備局課長 2人
 都市整備局所長▲
 東京消防庁方面本部長
 東京消防庁署長 3人
 東京消防庁副署長
 都市整備局所長▲
 港湾局課長
 (※は局長、▲は同一人物で2社に天下り
【第11面の解説】
小池知事は2016年の就任直後に、三井不動産レジデンシャルを代表企業とする大手不動産11社と旧五輪選手村の都有地の売却契約を結んでいる。中央区晴海にあるその土地は東京ドームの2.9倍にあたる13.4haの広さで、近隣地価の9割引き、129億6,000万円で売却され、都民から都財政に1,000億円の損失を発生させたとして訴訟を起こされている。
小池知事が23年に認可した神宮外苑再開発事業の施工者も三井不動産。樹齢100年を超えるイチョウ並木などを大量伐採する計画に、これも都民が訴訟を起こし、文化人、専門家などが相次いで反対の声をあげた。ユネスコの「国際記念物遺跡会議」が「比類ない文化遺産の危機」と警告、計画撤回を求めたが三井側は拒否した。
都幹部の不動産業界への天下りは、大型開発や東京五輪招致、お台場カジノ構想を打ち出した石原慎太郎知事時代から増え始め、小池都政下でも続いている。都にカジノを強く要望してきたのがフジテレビ、三井不動産、森ビルである。
以上、赤旗記事の要約。