沖縄は23日、20万人を超える人が亡くなった沖縄戦から79年の「慰霊の日」で、平和の祈りがささげられています。最後の激戦地となった沖縄本島南部の糸満市では、正午前から沖縄県主催の戦没者追悼式が開かれました。
正午 黙とう
玉城知事 「平和宣言」
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平和の詩「これから」朗読 宮古高校3年 仲間友佑さん
このほか式では県立宮古高校3年の仲間友佑さんがことしの「平和の詩(し)」に選ばれた「これから」を朗読しました。
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岸田首相「平和で心豊かに暮らせる世の中を実現する」
岸田総理大臣は、沖縄県糸満市にある平和祈念公園を訪れ、国立沖縄戦没者墓苑で献花したあと、戦没者追悼式に出席しました。
岸田総理大臣はあいさつの中で「先の大戦において、沖縄は凄惨(せいさん)な地上戦の場となった。不発弾の処理やご遺骨の収集は今もなお続いている。沖縄戦の悲惨な実相と平和の尊さを次世代に継承していくことは、われわれに課せられた責務だ」と述べました。
そして「来年には沖縄戦から80年を迎える。県民の皆様のたゆまぬ努力もあり、沖縄経済は着実に成長し、県民生活も大いに向上した」と述べた上で、「強い沖縄経済」の実現に向けて、国家戦略として沖縄振興を進めていく考えを示しました。
一方、今もなおアメリカ軍基地の集中など、大きな負担を担っているとして、政府として重く受け止め、負担の軽減に全力を尽くしていく考えを強調しました。
そして「戦後、わが国は一貫して平和国家としてその歩みを進めてきた。戦争の惨禍を二度と繰り返さないという強い決意のもと、世界の誰もが平和で心豊かに暮らせる世の中を実現する」と述べました。
追悼式出席者「二度と戦争を起こしてはいけない」
沖縄戦で家族7人を失ったという宜野湾市の又吉好子さん(85)は「家族のうち私以外全員が沖縄戦で命を落とした。みなしごだったので戦争が起きているイスラエルやパレスチナなどの子どもたちを見ると昔の自分と重なり悲しい気持ちになる。『二度と戦争を起こしてはいけない。起こさないでください』と願いながら花を手向けました」と涙ながらに話していました。
またおじを亡くしたという那覇市の田場博司さん(69)は「先祖がいるから自分たちが暮らせているし優しい気持ちで人に接することができる。中東などではずっと戦争をしているが、政治が民衆のことを考えられるようにならなければいけないのではないか」と話していました。
戦時中、父親が沖縄に出征して亡くなったという愛知県出身の80歳の女性は「父と同じ空気を吸ったのは1年で、思い出もないが、やっぱり私をこの世に残してくれた人だからという思いで訪れました。私には、子どもや孫ができて父も『元気でやってね』と言ってくれると思う。母は生前、ウクライナとロシアの戦争が始まった時に『また戦争なの』と泣いていた。私も戦争は嫌です」と話していました。
玉城知事 岸田首相と面会 基地負担の軽減の実現求める
沖縄県の玉城知事は、県主催の戦没者追悼式の終了後、記者団の取材に応じました。この中で、玉城知事は、追悼式に先だって、岸田総理大臣とおよそ10分間、面会したことを明らかにしました。
玉城知事によりますと、岸田総理大臣に対し、基地負担の軽減に向けたSACO合意の速やかな実現のほか、沖縄の振興策については「強い沖縄経済」の推進のために国からの交付金を十分に確保することなどを求めたということです。
これに対し、岸田総理大臣は「引き続きアメリカ軍基地の整理・縮小を進めていき、沖縄振興も政府としてしっかり取り組んでいく」と応じたということです。
面会について、玉城知事は「基地負担の軽減は実感を伴うようにやっていただきたいと伝えた。今後もアメリカ軍普天間基地の辺野古移設の断念を要請し、普天間基地の1日も早い危険性の除去をなおいっそう強く求めていきたい」と述べました。