東京都知事選はあすの告示で本格スタートする。現職の小池百合子知事に対して、立憲民主党が蓮舫氏(出馬に伴い離党)を擁立。この2人の一騎打ちムードだ。裏金問題ですっかり人気低迷の自民党は、目立たず、出しゃばらずの小池支援。そんな自民が水面下の働きを見せたのは都内を網羅した情勢分析。小池有利のデータが立候補表明前の小池陣営にもたらされていた。
小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの都議によると、小池知事は当初、5月29日に都議会で立候補表明する予定だった。出馬決意の原稿まで完成し、小池知事も目を通してOKしていたという。
ところが、蓮舫氏が2日前の27日、先制攻撃とばかりに出馬表明した。前日に静岡県知事選で立憲民主党が支援した鈴木康友氏が勝利したのが驚きの出馬に大きく影響したとされる。
野党陣営に強力な候補者はいないと踏んでいた小池陣営は急遽、大事なのは情勢の見極めだと出馬表明を取りやめ、慎重姿勢に転ずる。大事なのは情勢の見極め。いったい蓮舫氏はどの程度の脅威なのか。
情勢調査に動いたのは自民党だ。政治とカネの問題、岸田政権の支持率低下で、独自候補を立てても勝てる可能性がない。擁立断念は既に決めていた。それでも、毎週末、予算を投じ、きめ細かい情勢調査を始めた。ひとえに小池知事のためだ。小池知事にきちんと情報を出し、なんとか抱きついてでも共闘に加わる。自民にとっては連戦連敗を食い止める絶好の機会になる。
結果は。 小池4割 蓮舫3割
■やはり強い
6月に入って3回の週末で集計したところ、すべての回において、小池氏有利という情勢結果がでた。 「小池知事が出馬の最終決断をした要因のひとつはうちの情勢調査の数字です」
自民党関係者はそう胸を張る。 実際には、小池知事は独自に複数の情勢調査を実施している。 「どの調査でも、小池知事が蓮舫氏に10~15%ほどリードしている。最接近したもので8%。投票率にもよるが、投票率が60%ぐらいと想定して、250万票は確実だと小池知事は手ごたえをつかんで、出馬に踏み切った」(前出・都民ファーストの都議)
「小池さんはやっぱり強い」 蓮舫氏の陣営幹部はこうした調査結果にため息をつきつつ、 「現職で2期やっている小池知事とは10%しか差がないとも言える」 「うちでやっている調査では、小池知事がリードしているものの、10%以下の差で競り合っている」
自民党と対峙し、挑戦者の立場でもあったこれまでの選挙とは異なり、今回の小池知事は逆風の自民党が支援する。掲げてきた7つの公約はほとんど達成されず、学歴詐称問題という古傷もある。 「投票率が格段にアップすれば蓮舫氏が有利だと思う。どこかで波乱を起こせればと思っている」
先の情勢調査は都内を59のエリアに分類して集計している。このうち40の地域で小池氏有利という結果になっていた。23区内は小池氏が強く、多摩地域では蓮舫氏に勢いがある。
3番目の候補として、不気味な存在なのは、SNSで圧倒的な人気を誇る広島県安芸高田市の前市長、石丸伸二氏。先の自民の情勢調査では10%に届かず、小池陣営は今後も伸びを欠くと判断した模様だ。
しかし、今後、名前の浸透に伴う支持拡大の可能性もありそうだ。先の情勢調査を細かく見ると、港区ではトップが蓮舫氏。そして2位は石丸氏がつけた。
「広島の田舎の市長から都知事選にと表明して1か月。うちは伸びしろがまだまだある。SNS、スマートフォンを武器にさらに支持を拡大させたい」
石丸氏の陣営はアエラドットの取材にそう話す。
石丸氏を直撃した。 「小池知事、蓮舫さんの公約、拝見しました。本当にご自身で作ったものかなと感じます。私はすべて自分で作ったもの。それを訴えれば、チャンスはある」
自民党は4月末の補選、静岡県知事選と注目選挙で4連敗中だ。小池知事との交渉役は、関係のいい萩生田光一都連会長が担っているという。
「都知事選でなんとか連敗を止めたい。萩生田さんには岸田首相も『あまり前に出ないほうがいい』と言っています」(官邸関係者)
今西憲之