鹿児島県警の前の生活安全部長が警察情報を漏らしたとして逮捕された事件で、本田容疑者が調査報道サイトの記者に漏らしたとされる警察情報をめぐっては、情報漏えいではなく、組織の不正を告発する内部告発=公益通報だったと指摘する声もあります。専門家はどう見ているのか?取材しました。
(北方ジャーナル記者 小笠原淳さん)
「『闇を暴いてください』と書いてあって、これはいわゆる内部告発だろう」 調査報道サイトの記者に郵送されたとされる警察情報が書かれた文書。 この事件は、県警の前の生活安全部長で元警視正の本田尚志容疑者が、現職当時に入手した警察情報を記者に郵送したとして逮捕・送検されたものです。
本田容疑者は「野川本部長が、現職警察官の盗撮事案を隠蔽しようとしたため、記者に情報を送った」と主張。これに対し、野川本部長は「隠蔽の意図は一切ない」と否定しています。 県警によりますと文書には県警の不祥事のほか一般人や前の刑事部長の男性の個人情報も含まれていましたが、本田容疑者の弁護人は「不祥事を明らかにしようとした内部告発で、守秘義務違反罪にはあたらない」と主張しています。
(淑徳大学 日野勝吾教授)
「公益通報は狭い守備範囲で判断が難しい」 公益通報について詳しい、淑徳大学の日野勝吾教授です。 そもそも情報漏えいと公益通報は、どのように線引きされるものなのでしょうか? 日野教授によりますと、情報漏えいは、個人の利益につなげるために、情報を外部に伝えることをいいます。一方、公益通報は、組織の不正や違法行為を公益のために第三者などに伝えることで、告発した人は不利益を被らないよう法律で保護されます。
(淑徳大学 日野勝吾教授)
「情報漏えいは本人の不正目的。例えば上司を懲らしめたいとか、そういう恣意的な動機だが、内部告発は正当な目的。公益的な目的があって告発に至る」 ただ、日野教授は、今回、本田容疑者が逮捕されたケースは、記者に送ったとされる文書の詳細が明らかになっていないため、「公益通報」なのかどうかは判断できないといいます。