神宮外苑再開発が「人権に悪影響!」とは? 国連〇〇の報告書から見える国連至上主義の幻想と「やらかし」の歴史(2024年6月19日『FORZA STYLE』)

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さて、一部界隈が青筋立てて反対している東京の神宮外苑再開発。蓮舫氏も参戦し鼻息荒いご様子ですが、先日この事業に対し、なんと国連人権理事会の作業部会が、
「人権に悪影響を及ぼす可能性あり」
という謎の報告書を公表しました。ちょっとなに言っているか分かりません、ホントに分かりません。
適法な手続きを経て進められている民間事業であり、しかもこの再開発後によって、緑地面積も樹木の本数も今より増えるんですが、いったい誰が何を吹き込んだのでしょう。
このトンデモな物言いに外務省もブチ切れており、内容の訂正を求めています。が……実は党派性のある意見や意向が「国連〇〇」にインプットされ、妙な事態に陥るって、まあ良くあることなんです。
ニッポン女子の13%が援助交際
2015年、国連の「特別報告者」が日本の児童売春・児童ポルノの状況を調査されたんですが、あろうことか帰国時の会見で、
「日本の女子学生の13パーセントが援助交際をしている」
と言い放って帰国したんですね、何の根拠も示さずに。えっ!?
その方、一週間ほどの日本滞在中に政府関係者・民間人・団体へのヒアリングをおこなっており、その結果が「13%」だそうな。実はその時、なぜか私もその方に「日本の状況を説明する」側の1人だったんですよ。
私はエビデンスに基づき、日本のネットで起きている児童事案の状況、その対策・効果・課題について説明したんですが、なぜか一向に会話が噛み合わない。
「もっと酷い事例はないのか?」と何度も聞かれ、まるで最初から報告したい内容のイメージが出来上がっているようでした。ひたすら着地しない会話を交わし、納得せずに帰っていきましたね。
その後も数多くの個人・団体にヒアリングしたそうで、恐らく誰かが「実は、日本の女子学生の13パーセントが」という、相手が欲しがりそうな与太話を手渡したんでしょう。
このトンデモ発言に、政府・外務省がやはり激怒。すぐに「根拠を示せ」と猛抗議したところ、相手側が「重要なのは根拠ではない」と、これまた意味の分からない回答をよこしたもんだから、外務省はさらに猛抗議を重ね、最終的に国連サイドからのお詫び&撤回を勝ち取ったのでした。
2つの国連
「国連〇〇」は、福島原発事故関連でもやらかしています。次の2つの発言を見てみましょう。
「子供や出産年齢の女性は、まだ福島に戻るべきではない。なぜなら福島はまだ危険だから」
(2018:国連人権理事会)
「福島は大丈夫だ。そもそも原発事故の汚染に起因する健康被害は発生していない」
(2014:原子放射線の影響に関する国連科学委員会)
どちらも実在する国連組織の報告です。この全く異なる2つの報告書のせいで、SNS上では「こっちの報告書が正しい」「間違っているのはオマエだ」という殴り合いが今も続いています。どうしてくれるの。
実は2018年の報告書は、「神宮外苑」と同じ国連人権理事会が「13%売春」と同じ特別報告者という民間人に作らせたもの。一方で2014年の報告書は、数十名の専門家による科学的根拠に基づいた調査報告。どちらがマトモなのか、議論するまでもないですね。
国連と名の付く組織の中には、プーチンと戦っている凄い方々もいます。と同時に、組織内にトンデモな人物が食い込み、おかしくなっている団体もあるのです。
「国連の〇〇」が錦の御旗に見えてしまう報じられ方にも問題があると思いますが、何より「国連が、国連が」と主語を大きくして語る人は、そもそも国連という組織をよく知らないか、あるいは知っているのに……でしょう。
国連には「松竹梅」「甲乙丙丁」あるんです。是非知っておきましょう。
Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。