「幹部議員が環流復活要求」 安倍派会計責任者、被告人質問で説明(2024年6月18日『毎日新聞』)

東京地裁=米田堅持撮影

東京地裁=米田堅持撮影

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた清和政策研究会(安倍派)事務局長兼会計責任者の松本淳一郎被告(76)は18日、東京地裁(細谷泰暢裁判長)で開かれた公判の被告人質問で、パーティー券収入のノルマ超過分のキックバック(還流)について「一度中止が決まった後、幹部議員が復活要求し、再開された」と明らかにした。

 松本被告の説明によると、安倍派では、毎年パーティーが終わる度に、パーティー券収入の入金状況をまとめた資料を事務局側で作成し、派閥の会長に説明。会長のゴーサインをもらった上で、議員側にノルマ超過分を還流していたとした。

 松本被告は、還流をやめかけた出来事があったとも振り返った。2022年3月、当時の会長だった安倍晋三元首相から「還付のやり方には問題がある」と指摘があり、一度は還流中止を決定。しかし、安倍氏が銃撃事件で死亡した後の22年7月末に「ある幹部議員から『ある議員が還付(還流)の復活を求めている』と言われた」とし、当時の会長代理の塩谷立文部科学相に相談したという。幹部議員が誰だったのかは言及しなかった。

 こうした経緯を経て22年8月、いずれも当時の会長代理の塩谷氏と下村博文文科相▽当時の事務総長の西村康稔経済産業相参院の安倍派議員を取りまとめていた世耕弘成前党参院幹事長――の4人が協議。還流の復活について「やむなしという結論に至った」と振り返った。

 衆参両院の政治倫理審査会では、下村、西村、世耕の3氏が8月の協議について「結論が出なかった」と証言し、塩谷氏は「しょうがないかなとなった」と松本被告と同様の見解を示している。

 松本被告は被告人質問で虚偽記載について「前任者のやり方を踏襲してしまった。(自民)党全体に迷惑をかけ、申し訳ない。世の中の方々に疑惑を持たせ、大きな反省をしている」と謝罪した。【井口慎太郎、安元久美子】