◆東大の判断は今後他の国公立大にも影響か
◆教育格差の深刻化を懸念
◆「政治家にだまされた」有馬氏は晩年、法人化を悔やんだ
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東京大学が授業料の引き上げを検討していることを受けて、6月14日、学生らの団体が会見や集会を開き授業料免除の拡充や引き上げ案の撤回を訴えました。
授業料の引き上げを検討していることについて、東京大学は、6月10日に藤井輝夫総長のコメントをホームページに公表し、今後は総長が学生と対話する場を設けるなどして慎重に見極めた上で、決定した方針は速やかに公表するということです。
東京大学は現在、授業料の引き上げについて経済的困難を抱える学生への支援策とあわせて検討していて、仮に国が定める上限まで引き上げられると、現在の年間53万5800円から10万円余りの増額となる可能性があります。
~学生アンケート~
“「反対」71% 「どちらかといえば反対」20%”
14日は東京大学教養学部の学生自治会が会見を開き、5月下旬に行った学生へのアンケートでは、回答した2297人のうち引き上げに「反対」が71%、「どちらかといえば反対」が20%だったと説明しました。
~理由は?~
理由で最も多かったのは「経済的困窮者が大学教育から疎外される」で、次いで「ほかの大学も追随する可能性がある」が多かったということです。
会見した4年生の女子学生は「物価高による家計のひっ迫も深刻で、このタイミングで値上げされた場合さらに追い込まれる」などと訴えていました。
また、別の東京大学の学生らの団体も衆議院議員会館で集会を開き、文部科学省の職員に▼国立大学への運営費交付金の増額や、▼経済的に困難を抱える学生への授業料免除の拡充などを求める要望書を手渡しました。
東京大学3年の男子学生は「奨学金という名の借金を背負っており、授業料が上がれば大学院で研究したいとは言えない。高等教育の機会は誰にでも公平に与えられるべきだ」と訴えていました。
藤井総長“値上げの場合 経済的困難な学生への支援策検討”
授業料の引き上げを検討していることについて、東京大学は、6月10日に藤井輝夫総長のコメントをホームページに公表しました。
この中では「国からの運営費交付金や授業料収入など、限られた財源を活用して、教育研究環境の充実に加え、設備老朽化、物価上昇や光熱費等の諸費用の高騰、人件費の増大などに対応せねばなりません」とした上で、「過去3年間にわたり、さまざまな施策に取り組んできました。そうしたなかで20年間据え置いてきた授業料についても、改定を検討しています」としています。
あわせて「もし値上げをする場合には、経済的困難を抱える学生への配慮は不可欠で、授業料免除の拡充や奨学金の充実などの支援策もあわせて実施しなければならないと考えており、その具体的な仕組みも検討しています」とコメントしています。
今後は総長が学生と対話する場を設けるなどして慎重に見極めた上で、決定した方針は速やかに公表するということです。
学生ら反対集会“撤回や支援策など求める決議”
東京大学は現在、授業料の引き上げを検討していて、国が定める上限まで引き上げられた場合、現在の年間53万5800円から10万円余りの増額となる可能性があります。
これを受けて、6月6日に東京・文京区にある東京大学の本郷キャンパスで学生の団体が、授業料の引き上げに反対する集会を開き、およそ400人が参加しました。
参加者からは「特に地方出身者や女子学生が進学しづらくなり、多様性が失われる」とか「経済的支援を充実させても漏れるケースは必ず出る」といった意見が出ていました。
その上で大学側に、▼引き上げ案の撤回や、▼引き上げの根拠や詳細、経済的な支援策についての情報開示、▼学生団体との交渉の場の設定などを求めることを決議しました。
大阪出身 4年生の女性
「大学のお金がない状況は分かるが、10万円は相当大きな額でプレッシャーを感じます」
博士課程の男性
「これほど多くの学生が集まるとは思わず驚きました。それだけ問題視しているということなので、大学はきちんと声を聞いてほしい」
東京大学は「授業料に関して話し合っていることは事実だが検討中のため、公表できる情報はありません」とコメントしています。
国立大学 授業料引き上げる動き相次ぐ
国立大学の授業料は、文部科学省の省令で標準額が年間53万5800円となっていますが、特別な事情があるときは各大学が120%を上限に授業料を引き上げることができると定められています。
文部科学省によりますと、国立大学が授業料を標準額より引き上げる動きは相次いでいて、2019年度に初めて東京工業大学や東京藝術大学が引き上げて以降、一橋大学や東京医科歯科大学などこれまでに7つの大学が全学的な引き上げを行っています。
このうち6つの大学は上限の120%まで引き上げ、64万2960円としているということです。
国立大学の授業料“20年近く据え置き”
文部科学省の調査では、大学の授業料は私立では上昇が続いている一方、国立ではこの20年近くは据え置かれています。
国立大学の年間の授業料はおよそ半世紀前の1975年度・昭和50年度は3万6000円でしたが、2、3年に1度引き上げられ1987年度・昭和62年度には30万円となりました。
平成に入ってからも2年に1度引き上げられ、1993年度に40万円を超え2003年度に50万円を超えました。
国立大学が法人化され、2005年度に国が定める「標準額」が年間53万5800円となってから、20年近く国立大学の授業料の標準額は据え置かれています。
一方、私立大学の年間の授業料の平均はおよそ半世紀前の1975年度は18万円余りでしたが、1987年度に50万円を超え、2005年度には年間およそ83万円となりました。
私立大学ではその後も上昇が続き昨年度(2023年度)の平均は年間95万9205円となっていて、国立大学では標準額が据え置かれている間に、私立大学の平均は13万円近く、率にして15%増えています。