岸田首相と鳩山元首相の「思い」は同じや否や(2024年6月15日『産経新聞』-「産経抄」)

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会談を前に握手を交わすオバマ米大統領(左)と緊張した面持ちの鳩山由紀夫首相=平成21年11月、首相官邸(酒巻俊介撮影)
 
自民党総裁の任期中に改正を果たしたいという思いは、いささかも変わっていない」。岸田文雄首相は今年4月22日、国会で憲法改正についてこう述べたが、どうにも雲行きは怪しい。9月までの改憲には、今国会での憲法改正原案提出が不可欠だが、政権にその体力が果たしてあるか。
▼岸田首相は、国会議員に支給される「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)改革を巡っては12日、こう語った。「早期に結論を得たいとの私の思いは国会でも繰り返し答弁している」。だが、首相が合意を交わした日本維新の会との折り合いはついていない。
▼リーダーが「思い」を多用しだすのは、実際は物事がうまく運んでいないときだろう。例えば民主党鳩山由紀夫首相(当時)は平成22年4月の国会で、政権交代時に「最低でも県外」と公約した米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の移設問題について訴えていた。「5月末までに決着をさせると、その思いは変わっていない」
▼前年11月のオバマ米大統領との会談で「プリーズ・トラスト・ミー(私を信頼してほしい)」と言っておきながら、鳩山氏は迷走を続けた。3月中に移設先の政府案をまとめると表明して「強い思いと覚悟」を強調したものの、いざ3月末になると開き直った。「今月中じゃなきゃならないと、法的に決まっているわけじゃない」
▼挙げ句、5月に米政府と発表した共同声明は自民党政権時の計画とほぼ同じ名護市辺野古地区だった。岸田首相が「こうした思いで」などと自らの「思い」を口にするたびに、トラウマのように思い出す悪夢の記憶である。
▼まさか岸田首相が、鳩山氏と似ているか、同じタイプの指導者だなんてことはないと信じたい。