「法務省が袴田さん論告配布」と国会議員問題視 再審法改正目指す国会議連総会(2024年6月14日『静岡新聞』)

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あなたの国会議員連盟の総会で再審法の改正を訴える袴田巌さんの姉ひで子さん=13日午後、国会内
 規定が乏しく、冤罪(えんざい)被害者の速やかな救済につながっていないと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正実現を目指す超党派の国会議員連盟柴山昌彦会長)は13日、第5回総会を国会内で開いた。9月に判決を控える袴田巌さん(88)の再審を巡り、出席議員から、法改正に消極的な法務省がロビー活動の一環として袴田さんの論告要旨を配っているとの指摘が上がった。
 議連の逢坂誠二幹事長は「法務省が個別事件に入り込んでいいのか。完璧におかしい。もし(論告要旨を配布していることが)事実だとしたらとんでもないことだ」との認識を示した。
 袴田さんの再審で、検察は5月、袴田さんが一家4人を殺害した犯人だと論告し、死刑を求刑している。
 総会で自民党参院議員がロビー活動について発言し、袴田さんの論告要旨が届けられたと暴露した。誰に配られているかは分からないとした上で、もう一方の弁論要旨が手元にない中では「読んだ人は検察庁の言い分を正しいと思う蓋然(がいぜん)性が高いのではないか」と問題視。こうした法務省の姿勢を念頭に対応していかなくては「検察の主張が正しいと思われ(再審法改正を)一生懸命やらなくてもいいのではないかと議員が操作される可能性がある」と懸念した。
 議連の加入者は308人となり、その半数が与党自民党所属。別の参院議員は取材に「法務省は自民を中心に選んでロビイングをしているようだ」と話した。
■袴田さん姉「証拠開示規定を」
 再審法の早期改正を目指す国会議員連盟の第5回総会には、再審が開かれるまでに40年以上を要した袴田巌さん(88)の姉ひで子さん(91)らが招かれた。ひで子さんは「すべからく、(捜査機関の手元にある)証拠を出してほしい。今も隠しているものがあると思う」と証拠開示の規定を設ける必要性を強調。「ぜひ皆さまのお力をお貸しくださいませ」と呼びかけた。
 茨城県で発生した「布川事件」で再審無罪となった桜井昌司さん=2023年に76歳で死去=の妻恵子さん(71)も参加。「(法改正は)簡単だよ。国会議員に必要性と緊急性を理解してもらえるよう説得すればいいんだよ」が桜井さんの口癖だったことを紹介し、再審開始決定に対する検察官上訴の禁止と捜査機関が収集した全証拠へのアクセス権の確保を強く訴えた。
 議連はこれまでに法務省最高裁日弁連ヒアリングを行い、この10年間で二度の法改正を重ねた台湾の元立法委員(国会議員)から実現への知見を得た。
 17日には、積極的かつ速やかに法改正を進めるよう小泉龍司法相に要望書を手渡す。議連の柴山昌彦会長は「議員立法も辞さない覚悟だが、まずは政府の取り組みを促したい」とした。