JPドラゴン逮捕 特殊詐欺捜査の新局面だ(2024年6月14日『産経新聞』-「主張」)

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成田空港に到着した鹿児嶋孝之容疑者(右)=11日午後、千葉県成田市(桐原正道撮影)
 「ルフィ」など匿名で5都府県8件の強盗事件を指示していた特殊詐欺グループに、拠点のフィリピンで便宜を図っていたとみられる当地の日本人犯罪組織「JPドラゴン」のメンバーが強制送還され、福岡県警が窃盗容疑で逮捕した。
 JPドラゴンは、比における「ルフィ」グループの後見役で、事実上の上部組織とみられる。匿名性が高く、突き上げ(上部組織の解明)が難しい特殊詐欺の捜査で、JPドラゴンの摘発は新たな局面を切り開いたことになる。徹底解明と摘発を警察当局に期待したい。
 「JPドラゴン」は比で発生した暴力団関係者ら日本人による反社組織だ。当地の違法賭博などを通じて利権を握ると指摘されるが、詳細は不明だ。
 「ルフィ」グループの捜査で、日本警察がその存在を把握するところとなった。明瞭に姿を現したのは昨年2月、接見の弁護士を通じ、「ルフィ」グループ幹部がスマホでビデオ通話した際だ。通話の相手がJPドラゴンの幹部だった。起訴が続く「ルフィ」グループ幹部に口止めを迫ったとみられる。
 このJPドラゴン幹部も比当局に身柄拘束され、強制送還に向け手続きが進む。組織創設時からの古参メンバーとされ、「ルフィ」幹部が送還された後も、当地で残党を使い詐欺を継続していたとみられる。犯行経緯や組織の現状に詳しく、警察にとっては重要な容疑者だ。
 JPドラゴンは当地の利害関係者や当局とのパイプを生かして「ルフィ」グループに便宜を図り、その見返りに犯罪収益を上納させていたと推察される。場合によっては共犯に問うべき事例も浮上するだろう。警察には意欲的な捜査を求めたい。
 SNSを通じた投資詐欺、ロマンス詐欺が深刻化し、特殊詐欺も改善しない。徹底摘発が必要だ。昨年の特殊詐欺の総検挙者2455人のうち、首謀者級の検挙は2%に過ぎない。その中で、不明だった「ルフィ」の「上」の尻尾をつかんだのだ。決して離してはならない。
 日本では日々、特殊詐欺、SNS投資・ロマンス詐欺で4億円超(今年1~3月の統計)が騙(だま)し取られている計算だ。異常である。4月から始動した全国警察の連合捜査班をフルに生かし、突き上げ捜査で組織を丸裸にしたい。反転攻勢を望む。