健康食品は不断の安全対策を(2024年6月12日『日本経済新聞』-「社説」)

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小林製薬の紅麹コレステヘルプ
 小林製薬の紅麹(こうじ)原料を含むサプリメントによる健康被害問題を受け、政府は当面の対応策をまとめた。医師などから健康への被害が疑われる情報提供があった際、摂取との因果関係が不明でも、事業者には保健所などへ速やかな報告を義務付ける。
 また、品質・製造管理にあたっては医薬品並みのGMP(適正製造規範)基準の順守を求め、義務化する。
健康食品は医薬品と同水準の安全性を確保しなければならない。2つの対策とも妥当だが、遅きに失した感がある。国も事業者もすぐに実行に移してもらいたい。
 5人の死者を出した紅麹サプリの健康被害問題は発覚から2カ月半ほどたち、原因の見当がついてきた。製造工程において有害物質を生む青カビが混入し、腎機能障害を引き起こした可能性が高まった。なぜ青カビが混入したのかなどさらなる究明も急ぐことだ。
 対応策をまとめるにあたり、消費者庁は専門家による議論の対象を機能性表示食品の安全面に絞った。再発防止に向けた応急的な措置といえ、今後いっそう踏み込む必要がある。
 機能性(健康への効果)を表示できる健康食品には、機能性表示食品以外に「トクホ」で知られる特定保健用食品や栄養機能食品がある。さらに表示が認められない「健康食品」も普及している。
 体調の管理や病気の予防目的で口にするからこそ、国も事業者も安全・安心の策を怠ってはならない。今回の対策は機能性表示食品以外にも広げるべきだ。
 2015年に登場した機能性表示食品は科学的根拠や安全性に関する情報を事業者が届け出さえすれば、審査不要で販売できる。市場が急成長する半面、トクホとの相違がわかりづらく、表示の仕方や過大広告も問題視されてきた。
 健康食品は嗜好品とは違う。セルフメディケーション、健康増進の観点から、正しく活用してもらうため、制度には不断の見直しが求められる。